今日はヤナップの1泊健康診断。
私はノボリさんと一緒にポケモンセンターへとやってきていた。

「では、ジョーイさん。ヤナップのことをお願いします」
「はい、お預かりします」
「ナップ?」

ヒヨリとジョーイのやり取りに首を傾げたヤナップ。

「ヤナップ、今日はポケモンセンターにお泊りだよ」
「ナップ!?」

急にヤナップの表情が暗くなり、ヒヨリに飛びついた。

「え、ヤナップ?」
「ヒヨリ、もしかしたらヤナップはまた置いていかれると思ったのでは?」
「そうなの、ヤナップ?」
「ナップナップ」

ノボリの推測をヤナップに聞けば、ヤナップは今にも泣きそうな顔で首を縦に振っていた。
オレンの実の木での出来事。1度、離れ離れになったヒヨリとヤナップ。
ヤナップはヒヨリにこのことを気にしていないと言っていたが、やはり無意識に不安になってしまうのだろう。
また、ヒヨリと離れ離れになってしまうのではないかと。
どれだけヒヨリが好きなのだろうか、とノボリは苦笑してしまう。

「大丈夫だよ。明日、ちゃんとお迎えに来るから」

安心させるように、頭を撫でながらヤナップに言った。
ヤナップは不安そうな顔をヒヨリに向ける。

「でしたら、わたくしのシャンデラも一緒に泊まらせることにいたしましょう」
「え、良いの?」
「ええ。ヤナップの一大事です。シャンデラもいれば、明日必ず迎えに来てくれると信じてくれるでしょう」

そう言うと、ノボリはシャンデラをボールから出した。
しゃーん、と一鳴きしてシャンデラが姿を現す。

「シャンデラ、ヤナップと一緒にポケモンセンターへ泊まっていただけますか?」
「シャン!」

ノボリがそう言えば、シャンデラはわかったよと頷いた。

「ヤナップ、これで寂しく御座いませんし、明日必ず迎えに行くと信じていただけますね?」
「ナップ!」

ヤナップもシャンデラがいれば、と頷くのだった。

「これで決まりです。ジョーイ様、シャンデラとヤナップをよろしくお願い申し上げます」
「お願いします」
「はい、お預かりします」

ジョーイにぺこりとお辞儀をすれば、ノボリとヒヨリはポケモンセンターを後にするのだった。


―――――――


人通りの少ない道を、手を繋ぎながら地下鉄へと歩いていく。
ふっと、ノボリの横顔をみた。
ノボリは前を見据えている。
ヒヨリの視線に気が付いたノボリは、ふわりと微笑んだ。

「どうしました?」
「ううん、何でもないの」

頬を染めながら、慌てて視線を下に落とす。
ノボリはクスクスと笑う。

「よそ見してると、転びますよ」
「そんなことな、・・・ひゃっ!」
「おっと」

地面に埋まっている石に躓くヒヨリをノボリは軽々しく受け止める。
言われた傍から躓く自分が恥ずかしくなり、ヒヨリはまた頬を染めた。

「大丈夫ですか?」
「ありがとう、ノボリさん」
「いえいえ、ヒヨリに怪我がなくて良かったですよ」

そう言いながら、態勢を元に戻そうとしたらそのままノボリに抱きしめられる。

「ノボリ、さん?」
「・・・ヒヨリ」

低く甘い声で囁かれる自分の名前。
ヒヨリはその声色にびくん、と身体を強張らせた。

「今晩うちへ泊まりに来ませんか?」
「・・・え?」

驚いてノボリを見上げた。
ノボリのその表情は妖艶で、ヒヨリはそれがどういう意味かを悟った。
頬を染めて、視線をノボリから逸らした。
ノボリはヒヨリの顔を自分の方へ向かせると、ちゅ、と額へキスを落とす。
そして、耳元へと唇を寄せた。

「あなたが欲しいで御座います、ヒヨリ・・・」

震える身体でノボリのコートを両手でつかむヒヨリ。
視線を下に向けて、「うん」と返事をする。
それを聞いたノボリはもう1度ヒヨリを抱きしめるのだった。


ドキドキ初体験

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