ベッドの上で雑誌を読んでいると、ヤナップが部屋へとやってきた。
「ナァップ」
「あれ、ヤナップ?どうしたの?」
ヒヨリは読んでいた雑誌の視線をヤナップへと向ける。
先ほど、ノボリに「ヤナップと男の会話をする」と言って、
ヤナップを連れ、お酒とジュースを手に持ち、自室へと消えた。
ヒヨリは立ち入り禁止令を出されてしまい、特にすることもないので、自分の部屋でゆっくりと雑誌を読んでいたのだった。
ヤナップが部屋へやってくるや否や、ヒヨリのいるベッドまで歩み寄ってくる。
抱き着いてくるのかと思い、ヒヨリはベッドから起き上った。
ヤナップはベッドの上に乗り、ヒヨリの肩に手を置いた。
「・・・え?」
驚いてヤナップの顔を見るヒヨリ。
次の瞬間、ドサッと倒れる音がした。
視界いっぱいに広がるヤナップの顔。
「え、ヤナップ?」
「ヤナナ」
ヤナップはヒヨリの頬に手を這わした。
ノボリみたいな事をしてくるヤナップにヒヨリは目をぎょっとさせた。
距離が近いからか、微かにお酒の匂いがヤナップからする。
よく顔を見れば、とろんとした表情を浮かべていた。
ノボリにお酒でも飲まされたのだろうか。
ヒヨリはヤナップに本気で制止の言葉をかけた。
「ちょ、ヤナップ。やめ・・・」
「ヤナァ・・・」
ヤナップがヒヨリに覆い被さってきた。
抱き着かれる形となり、ヒヨリは内心ほっとした。
ヒヨリの上ですぅすぅ、と寝息を立てている。
どうやら眠ってしまったようだ。
「寝ちゃった・・・」
ヒヨリはヤナップを抱え、上半身を起こした。
すると、ガチャ、と部屋の扉が開いた。
ヤナップと自分以外でこの家にいるのはシャンデラかそのパートナーしかいない。
現在、シャンデラはボールの中で休んでいるため、そのパートナーが姿を現した。
「ヒヨリ、ヤナップがこちらへ来ていませんか?」
「ヤナップならここだよ」
「寝て、しまいましたか」
ヤナップの姿を確認すると、ノボリはほっと胸を撫で下ろした。
「なんかヤナップからお酒の匂いがしたんだけど・・・」
「申し訳ございません。ヤナップがジュースと間違えて飲んでしまったようでして」
「そういうことなら仕方ないかぁ」
話を聞く限り、ヤナップがノボリのお酒と自分のジュースを間違えて飲んでしまい、ノボリが少し目を離した隙にとろんとした表情を浮かべて部屋を出て行ったらしい。
「ところで、なぜそんな態勢なのですか?」
「え、なんかヤナップに押し倒された」
「なんですって?」
押し倒された、という言葉にノボリの眉間に皺が寄った。
少し怒りの籠った、低い声にヒヨリは首を傾げた。
「ノボリさん?」
「わたくしもヒヨリを押し倒したいに御座います・・・」
そう言うや否や、ヒヨリの肩に手を伸ばすノボリ。
「ちょ、ヤナップ寝かせるのが先・・・!」
「では、ヤナップを寝かせれば押し倒してもよろしいのですね?」
「そういう意味で言ったんじゃ・・・!?」
ヤナップをヒヨリから奪い取り、素早くベッドへと寝かせたノボリは、横であわあわとしているヒヨリの腕を掴み、ヒヨリの部屋を後にする。
ノボリの自室へとやってくれば、ヤナップがお酒を飲んだ形跡が残っていた。
ヒヨリはそれに苦笑し、ノボリはヒヨリの身体をベッドの上へと優しくゆっくりと押し倒したのだった。
酔っ払いヤナップ