少し遅くなっちゃったけど、今日はノボリさんとヤナップと3人で近くの神社までお参りに来た。
お金を人数分お賽銭箱に入れて、カランカランと太い紐(名称忘れた)を鳴らし、3人でパンパンと手を合わせる。


―――今年も無事に3人で過ごせますように。


去年は色々と初めてのことが多かった。
ノボリさんと付き合うことで、知らなかった感情も知ってしまった。
経験しないことをたくさん経験できた、そんな年だった。

「さて、参りましょうか」
「うん」

ノボリさんが私の手を握る。
ヤナップがノボリさんの肩に乗って、私に微笑む。
2人と1匹で来た道を歩いていると、ヤナップがノボリさんの肩を叩いた。

「どうしました?」
「ナププ!!」

ヤナップがあれ、と指差した。

「え、お守り欲しいの?」
「ナァップ!」

ヒヨリの発言にヤナップはうん、と頷いた。

「ふむ。行ってみましょうか」
「ナップ!」

ノボリもヒヨリの手を握り、ヤナップと3人でお守りが売っている売店へと歩いていく。
売店前まで来れば、ヤナップは会計口によじ登り、目当てのお守りが飾ってある窓へと手を叩いた。
そのお守りは、神社に来る前にヤナップが真剣に見ていたチラシの物と同じだった。

「ヤナナ」
「これ欲しいの?」

ヒヨリがまた聞けば、うんと頷くヤナップ。
しかし、このお守りは好きな人に渡せれば、その恋は実ると言われているお守りで。

「ヤナップ、これ恋愛成就のお守りだよ?好きな子でもいるの?」
「ナップ!」

ヤナップはまたうん、と頷く。
ヒヨリは考え込んだ。まさか、ヤナップに好きな子がいたなんて。
ヤナップの周りにいるメスのポケモンと言えば、シャンデラくらいで。
それ意外にヤナップの周りにいるメスポケモンなんている由もない。
好きになったのがシャンデラなら、とヒヨリは内心ほっとしている。

「ふふ、まさかヤナップ。好きな子はヒヨリと言うのではありませんか?」
「ヤナナ!」

ノボリの発言に「え?」と思いつつヤナップを見れば、ヤナップは頭に大きな石を落としたような衝撃の顔をした。
どうしてわかったの、と。

「だめですよ。いくらヤナップでもヒヨリはわたくしの彼女です。お渡ししませんよ?」
「ヤプゥ・・・」

いつぞやの約束事はどこへ行ったのやら。
ヤナップは耳をしおらせ、悲しい表情を浮かべた。

「ノボリさん!もう、何言ってるの。ヤナップはポケモンなのに・・・」

顔を下へと向けてしまったヤナップにヒヨリはしゃがみこみ、ヤナップの頭を撫でた。

「ヤナップは私とずっと仲良くいたい、そう思ったからこのお守り選んだよね?」
「ナップ、ナップ」

ヒヨリがそう言えば、その通りと首を縦に振るヤナップ。

「恋愛成就と仲良くしたいは少し違うような気もしますが・・・」
「それ言っちゃダメ!」
「うぐっ」

ヒヨリはノボリの口許を自分の手で押さえつけた。
そのまま売店の前にあるお守りを見る。

「あ、ヤナップ。だったらこっちのお守りにしよう?」
「ナプ?」

ノボリの顔から手を離し、セットになっているお守りを手に取った。
それは、ポケモンとトレーナーがいつまでも仲良くと祈願が込められているお守り。

「ほら、ペアお守り。ポケモン用とトレーナー用があるみたい。ずっと、仲良く友達でいようっていう祈願が込められているみたい」
「ヤナァ!」

ヤナップは嬉しそうにヒヨリに抱き着いた。

「気に入ったみたいだね」
「ですね。これ、2つ下さいまし」
「え、ノボリさんも買うの?」
「ええ。わたくしとシャンデラの分もです」
「ありがとうございます〜」

お金を払うと、紙袋に入れられたお守りを受け取ったノボリ。
袋を開けると、その中の一つのお守りをヒヨリに渡した。

「ありがとう、ノボリさん。買ってもらっちゃって」
「良いんですよ、このくらい・・・」

ヒヨリはお守りが入っている包みを開けた。
ポケモン用のお守りを取り出し、それをヤナップに渡した。

「ヤナップ。はい、お守り」
「ナァップ!」

ヤナップはお守りを受け取ると、嬉しそうにその場で飛び跳ねた。
それをいつか自分の為にと作って入れたポシェットに括りつけようとするが、上手くいかず、ヒヨリが苦笑して括り付けてあげると、ありがとうと言うかのように鳴く。

「ヤナップ、喜んでくれて嬉しいよ」
「ナップ!」
「ヒヨリ、これを」
「え、これ・・・」

いつの間に買ったのだろうか。
それは、先ほどヤナップに説明した好きな人に渡せれば恋が実るというお守り。

「わたくしとヒヨリのペアのお守りに御座います」
「ヤナップに対抗しなくても・・・」

ペアと言うだけで、ヤナップに対抗心を燃やしたのだろうか。
でも、ノボリとヤナップは仲がとても良い。
だけど、たまに自分のことを取り合いする喧嘩もしてるのはまた事実で。

「対抗なんかしていませんよ」
「わかってるよ。ちょっと言ってみたかっただけ・・・」

くすくすと笑えば、ノボリも笑みを漏らした。

「全く、あなたと言う人は。はい、あなたの分ですよ」
「ありがとう。ここの神社のペアのお守りってよく効くって評判なんだよね」
「そうなのですか・・・」

ヒヨリはノボリから受け取ったお守りにそっとキスを落とす。
ヒヨリのその行動にノボリは目を見開いた。

「ヒヨリ?」
「ううん、何でもない」
「あ、あちらにもおみくじがあるみたいです。行ってみますか?」
「おみくじかぁ、去年大凶引いちゃったから、今年は良いの引けるといいな」

ノボリは再度ヒヨリの手を握ると、おみくじのある方へと足を進めるのだった。


初詣

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