冬のとある夜のこと。
天気予報で今晩は一段と冷えると言っていた。
それを聞いてヒヨリはリビングでつけてる暖房の設定温度を少しだけ上げる。
だが、元から寒がりのヒヨリは暖房の設定温度を上げても身体が温まっているという感覚はなかった。ソファーに座り、身震いをして呟いた。

「寒い・・・」

食後のリラックスタイム。
ノボリはキッチンで紅茶を入れて、テーブルの上に置いた。
ガタガタ震えるヒヨリの隣に腰を落とした。

「寒いんですか?」

ノボリにそう言われれば、ヒヨリはこくん、と頷く。
リビングの向こう側ではヤナップとシャンデラの楽しそうな笑い声がしてきた。
2匹で仲良くテレビを見ているようだ。
ヒヨリはその光景に笑みを漏らしながら、ノボリに呟いた。

「私、冷え性なんですよ・・・」
「ほう、それはそれは・・・」
「あ、そうだ。ヤナップ、ちょっとこっち来てほしいな」
「ナップ?」

ヒヨリが少し大きめの声でヤナップを呼ぶ。
ヤナップが呼ばれて振り向けば、ヒヨリが手招きをしていた。
シャンデラは隣にいたヤナップが立ち上がった事にも気づかないほどテレビに夢中になっていた。
大好きなヒヨリに呼ばれれば、夢中になっていたテレビも放り出すヤナップ。
てちてちと、ヒヨリの元へ歩いていけば、両脇を掴まれ抱き上げられた。
一瞬驚くヤナップだったが、ヒヨリは微笑んでヤナップを自分の膝の上に下ろす。
顔を自分と同じ方へ向かせれば、後ろからぎゅっとヤナップを抱きしめた。
ヤナップの身体の暖かさがヒヨリに伝わってくる。

「あったかい・・・」

そう言って、ヤナップの耳ではあるが頬ずりする。
ヒヨリの吐息を感じたヤナップは少し擽ったそうにするが、まんざらでもない様子だった。

「ナップ!」

嬉しそうに声を上げる。

「ヤナップ。可愛いし、あったかいよ・・・」

そう言って、ヤナップを抱く力を少し込めた時だった。
自分の腕の中にいたヤナップが突如いなくなった。

「あっ!」
「ヤプ!?」

ヤナップの声がしたほうを見てみれば、ノボリが後ろからヤナップをひょいと抱き上げていた。
いつソファーから立ち上がったのだろう、と思っていると、シャンデラが
ヤナップが隣にいないことに気が付いてヤナップを探し始めた。

「シャーン?」
「ほら、ヤナップ。シャンデラが呼んでいますよ」
「ヤナァ・・・」

ヤナップを床に下ろし、シャンデラがいるほうへ行くようにと促すノボリ。
シャンデラはヤナップを見つけると、即座にかけよった。
ノボリの方をちらっと見て、何か悟ったシャンデラはヤナップの手を引いて隣の部屋へと消えてしまった。
パタン、と閉められた扉をみて、ヒヨリは切なげに声を上げた。

「あぁ、私のホッカイロがぁぁあ」
「ヒヨリ、ホッカイロならここにいますよ」
「え?」

何ともそっけない声を上げた瞬間、視界がぐるりと反転する。
背中にはソファーの柔らかいスプリング、白い天井が見えると思えばノボリの顔が自分の顔を覗く。
押し倒された、と分かればヒヨリは顔をだんだんと赤らめていく。

「なっ・・・!」
「寒いのでしたら、わたくしが温めて差し上げますよ」
「・・・っ!」

顔だけではなく、身体中が火照っていくのがわかった。
フッと、妖艶的に笑って言ったノボリのセリフにヒヨリの心臓は爆発寸前だった。
だけどたまにはこうやってノボリさんから与えられる熱で身体を温めるのも悪くはないかな、と思いながらヒヨリはノボリのキスを受け入れるのだった。


ほっかいろ
(身も心もポカポカ温かい)

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