ノボリさんと初めて繋がった夜。
私はノボリさんにとても大切にされているんだなと、心と身体で感じることができて、
とても幸せで嬉しかった。繋がることがこんなにも幸せだったなんて思わなかった。
ノボリさんに全てを委ねて本当に良かったと思ってる。
だけど、あの夜から時々夜になるとノボリさんの様子が少しおかしい。
今日だって。
覆い被さって熱いまなざしで私を見てくるのだけれど。
「ヒヨリ・・・」
「ノボリ、さん?」
「何でもございません。おやすみなさい・・・」
そう言うと、ノボリさんは私の額にキスをして、眠りについた。
本当、どうしたのかな・・・?
信じる気持ち
ノボリが見回りで執務室を留守にしている間、ヒヨリは執務室でノボリの帰りを待っていた。
今はクダリと2人きり。想いを伝えられたこともあったが、今はノボリのことで相談できる唯一の存在になっている。ヒヨリは最近思っていることを思いきってクダリに話してみることにした。
「あのクダリさん・・・」
「ん?」
名前を呼ばれてヒヨリの顔を見れば、モジモジとしたヒヨリがそこには立っていた。
顔もほのかに赤い。
「あの・・・えっと・・・」
いつまでたっても話を切り出さないヒヨリにクダリの口角が上がる。
冗談半分で口を開いた。
「どうしたの?ついにノボリ兄さんとシちゃったとか?」
そう言えば、赤くなって下を向いてしまった。
「えっ、図星・・・?」
これにはクダリも目を丸くした。それと同時に嬉しくもなった。
好きな人と結ばれる―――。これ以上に幸せなことはない。
前にノボリが言っていた。ヒヨリはもしかしたらすることを怖がっているのかもしれない、と。
だったら、愛する人と繋がる幸せを教えてあげるのが自分の役目だと。
クダリはフッとヒヨリに笑いかけた。
モジモジしていたヒヨリの頭にポンポンと手を置き「良かったね」と呟いた。
ヒヨリが顔を上げて言葉を紡いだ。
「の、ノボリさん、おかしいんです。あの夜から時々だけど、寝るときになると私を見つめたかと思ったら、お休みって言ってキスして寝ちゃったりして・・・」
ヒヨリの言う、ノボリの行動。
それはきっと、目の前の愛しいと思うヒヨリを大事にしたいから。
自分が彼氏でもきっと同じことをするだろう。
「そう言うことか」
「?」
クダリがぽつりと言った言葉に首を傾げるヒヨリ。
「ヒヨリちゃん、心配しなくても大丈夫。ノボリ兄さんのその行動は君を大事にしたいからだよ」
そう言ってやれば、ヒヨリはまた首を傾げる。
「どういうことですか?」
「ノボリ兄さんにでも聞いてみたら?」
クダリがそう言ったと同時にノボリとヤナップが戻ってくる。
ヤナップはヒヨリめがけて抱き着いた。
「ヤナップ、見回りお疲れ。ノボリさんもお疲れ様・・・!」
「ヤナナぁ!」
ヤナップは嬉しそうにヒヨリの頬にすり寄った。
「今日はこれにて業務は終了で御座います。ヒヨリ、帰りましょう」
ノボリはそう言うと、ヒヨリの手を取った。
クダリに「お先に失礼しますよ」と言えば、執務室を後にした。
「全く、ノボリ兄さんも大変だよなぁ。でも、幸せそうだから良いか」
男と言う生き物をまだまだ知らないヒヨリ。
男という性を必死に抑え込もうとしているノボリに少し同情するも、
心から愛している存在がいることを少し羨ましく思いながら、
クダリも早くそういう存在を見つけたいと心から思うのだった。