椅子に座れば、高級ワインがグラスに注がれた。
ヤナップにもご丁寧に綺麗なコップにジュースが入っていた。

「ヒヨリ、ヤナップ。ハッピーホワイトデーで御座います」

そう言えば、3人でグラスを持って乾杯。
ワインを一口含んだ。何とも甘くて芳醇な味がした。
だけど、私は慣れないお店に緊張しっぱなしだった。
まだドキドキと心臓がうるさい。
それがノボリさんに伝わったのか、ノボリさんが苦笑した。

「ヒヨリ、そんなに緊張なさらなくても・・・」
「だって・・・」


WHITE DAYS


次々に運ばれてくるイタリア料理。
綺麗な見栄えとその美味しさにヒヨリは満足していた。
他愛のない話をしながら、料理を堪能する。
最後のデザートを口にして、食事は終わった。

「御馳走様でした。とてもおいしかったです」
「それは良かったで御座います」

食事を終えると、ヤナップがノボリに口許を押えて何かを言い出した。

「ヤナナプ、ナップ!」

それを見たノボリは微笑んでヤナップの頭を撫でた。

「ヤナップ、今日だけで御座いますよ」
「ナァップ!」

そう言うとヤナップは椅子から降りて、ヒヨリの座っているテーブルまでやってきた。
ヒヨリの膝の上にちょこん、と乗っかりヒヨリを見上げた。
ヤナップを見下ろし、ヒヨリは首を傾げた。

「ヤナップ?」
「ヤナ、ヤナナ」

ヤナップは背伸びをする形を取って、ヒヨリに口づけた。
それは、まるで「すき、ヒヨリ」と言っているようにも思えて。
唇が離れて、ヒヨリは目を見開いた。

「え・・・?」
「ナァップ!」

キスに満足したヤナップが自分の椅子へ戻り、綺麗にラッピングされた箱を手に戻ってきた。
それをヒヨリに渡した。それを見て、ヒヨリはヤナップを見た。

「これは・・・?」
「ヤナップからヒヨリへのホワイトデーの贈り物です」

それを聞いて、目を細めたヒヨリ。
包みを手に取り、ヤナップに言った。

「開けて、良いかな?」
「ナァップ!」

こくん、と頷けば、ヒヨリはゆっくりと包みを開けていく。
出てきたのは、ヤナップの形をしたストラップだった。

「わぁ、可愛いストラップ。ありがとう、ヤナップ。大事にするからね」
「ナァップ!」

ヒヨリが嬉しそうにヤナップの頭を撫でれば、ヤナップも嬉しそうに両手を上げて喜んだ。

「では、今度はわたくしの番ですね」

ノボリが立ちあがり、ヒヨリの座っている椅子の後ろへ回った。

「・・・?ノボリさん?」
「こっち向かないで、そのままでいてください」
「う、ん・・・」

ノボリに言われるがままに、そのまま向こうの方を見ていたヒヨリ。
何をされるんだろうとドキドキしながら、ノボリの動きを待つ。

ノボリはポッケからネックレスを出すと、ヒヨリの首元に手を回した。
後ろでホックをつけて、ヒヨリに手鏡を差し出した。

「これで首元を見てください」

ノボリにそう言われて、鏡で首元を映しだした。
それを見て、ヒヨリは嬉しそうな声を漏らした。

「わぁ・・・」
「ナプ・・・」

ヤナップもそのネックレスの輝きに声を上げた。
小さなハートに微かな宝石が埋め込まれている。

「素敵でしょう?」
「うん!可愛い!!良いの?こんなの貰って・・・」
「ええ、ヒヨリに似合うと思いましたので。こちらはそのネックレスとセットになっていたブレスレットで御座います」

ヒヨリの横に回り、ヒヨリの手を取ると、手首にそっとブレスレットをはめた。
こちらは小さなハートが連鎖していた。
ヒヨリはにっこり微笑んだ。

「ありがとう、大事につけるね」
「ええ・・・ヒヨリ」
「なぁに?」

ノボリに名前を呼ばれれば、首を傾げて返事をするヒヨリ。
ヒヨリの耳に唇を持ってきて、そっと囁いた。

「良ければ、今夜もバレンタインデーの時みたいにあなたを・・・」
「・・・っ!」

バレンタインデーの時。
チョコを渡した後にノボリにおいしく頂かれてしまった。
それを思い出し、顔を真っ赤にさせたヒヨリ。

「嫌、でしたか?」

ノボリが赤くなったヒヨリの顔を覗きこんだ。
フッと、ヒヨリは微笑んだ。

「違うよ。ねえ、ノボリさん。ヤナップ」
「ナプ?」
「何でしょう?」

今度はヒヨリが2人の名前を呼ぶ。
ノボリとヤナップは首を傾げてヒヨリの顔を見据えた。

「2人のホワイトデーの気持ち、すっごく嬉しいよ。ありがとう」
「どういたしまして」
「ナァップ!」
「でもね、・・・」

視線を逸らしたかと思うと、まっすぐにノボリとヤナップの顔を見て微笑んだ。

「私は2人がこれからもずっと傍にいてくれればそれで嬉しいから!」

一瞬、目を見開いたヤナップとノボリ。

「ヤナナ・・・!」
「ヒヨリ・・・!」

ヤナップが先にヒヨリの胸に飛び込んで。
ヒヨリがヤナップを抱きしめれば、ヤナップは顔を上げて一鳴きすれば、ヒヨリの肩に乗った。
ノボリもまた、ヒヨリを思い切り抱きしめる。ヤナップが2人を見れば、3人でそっと笑いあうのだった。

抱きしめられながら、ヒヨリは思い出したように言った。

「そう言えばノボリさん。シャンデラにお返しは?」
「シャンデラにはクッキーをお返ししたで御座います」
「そっか。喜んだよね、シャンデラ・・・」
「はい。そろそろ帰りましょうか」
「うん!」

ヒヨリの手を取ったノボリは歩き出す。

昼休みにシャンデラにきっちりとお返しをしていたノボリ。
シャンデラもまた、嬉しそうな表情を浮かべていたのだった。

実はシャンデラの顔のチョコをノボリが見た時、絶句したのはノボリだけの秘密。

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