今、ノボリさんはヤナップを連れて見回りに行っている。
残された私は傍で休憩しているクダリさんに最近思っていることを口にしてみた。

「クダリさん」
「ん?」
「ノボリさんって、どうしてあんなに色気があるんですか?」
「ぶっ・・・!」

クダリさんは飲んでいたお茶を噴出した。
そんなに変なこと言ったかな、私?
私は頬をぷぅと膨らました。

「何で吹くんですか?」
「ごほっ、ヒヨリちゃん、どうしたの急に?」

クダリさんは少し困ったような、苦笑してる表情で聞いてきた。

「うーんと、ノボリさんっていつも大人の余裕を見せてくれるって言うかなんて言うか。一つ一つの仕草にきゅん、って来ちゃうっていうか・・・」

最近いつも思う。
抱きしめられてる時、キスしてる時。
ノボリさんの表情がすっごく色っぽくってドキドキする。
それどころかコートを脱いだり、ネクタイを外したりするあの表情にもドキドキしてしまうのだ。
ノボリさんの一つ一つの仕草が私の心臓に悪い。
クダリさんが考える人になる。

「つまり、ノボリ兄さんにドキドキしっぱなしってこと?」
「そう、なります・・・」

今思っていたことを当てられた気がして、私は恥ずかしくなって、俯いてしまった。
でも待って。ドキドキしっぱなしだからノボリさんに色気あるように感じるのかな?

「うーん、僕からしてみれば、ヒヨリちゃんもノボリ兄さんと同じように色気あると思うよ?」
「え?」

意外な言葉に顔を上げる。
それ、どういう意味ですか?

「あ、訂正するね。色気と言うよりは、輝いてる」
「かが、やいてる?」

色気があるよりかは輝いてる。
どういう意味だろう。
私だって女の子だもん。
ノボリさんみたいな大人の色気が欲しい。
輝いてる、じゃ答えになってないよ・・・。

「うん。あ、ノボリ兄さん来たよ」

クダリさんがドアの方を見た。
振り返れば、そこにはノボリさんとヤナップがいた。
ヤナップは私に飛びついてきた。
抱き留めて、その頭を撫でてやると、ノボリさんに向き合った。

「ノボリさん、お疲れ様です・・・」
「じゃあ、僕は行くね」
「はい、ありがとうございました」

そう言うと、クダリさんは部屋を出て行った。
これから帰るのかな?

「クダリと何をお話ししてたんですか?」
「うんとね、ノボリさんはどうして色気あるのかって聞いたの」
「・・・はい?」

私の言葉に今度はノボリさんが固まった。
クダリさんと言い、私は何か変なことを言ってるのかな?
これでも結構悩んでるのに。私は続けた。

「そうしたら、ドキドキするのって聞かれたからね、それが原因でノボリさんに色気があるように見えるのかな?って思って。そしたら、クダリさんは私も色気あるよって言ってさ。でも、色気じゃなくて輝いてるって。ノボリさん、どういう意味だと思う?」

私がそう言うと、ノボリさんは一瞬だけ何かを考えた。
そして、フッと笑う。その仕草にまたドキリとしてしまって。

「・・・ふっ、そう言うことですか」
「え?・・・んっ」

意味が分からない私に口づける。
ヤナップが私の腕の中で「ナプゥ・・・」って言いながら顔を手で覆ってる。
ヤナップいたの、忘れてないよね・・・?

ノボリさんの唇が離れた。
頬に添えられていた手が頬を撫でる。

「誰かに恋する女の子は輝いてるとクダリはおっしゃいたいのでしょう。わたくしを想うヒヨリは本当にきれいで御座いますよ」
「そういうことじゃなくて、ノボリさんみたいな色気欲しいのに・・・」

顔を逸らせて言った私にノボリさんは口角を釣り上げて言い放った。

「ヒヨリは十分色っぽいですよ」
「・・・え?」

再び視線をノボリさんの方へ向ければ、今度はさっきよりも熱いキスを貰うのだった。


色気の話
(ヒヨリのそういう仕草が色っぽいなんて。本人は気付いていないのでしょうね)


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