立春が過ぎ、梅の開花予報もされた2月中旬。
春が近くに来ているとはいえ、まだまだ寒い日は続く。
時刻は夜中の0時を回ろうとしていた。
ノボリの家に泊まりに来ていたヒヨリ先にヤナップと就寝していた。
ふいに、ヤナップの呻き声が聞こえて目が覚めた。

「ヤナ〜〜」
「ヤナップ?どうしたの?」

ヤナップの方を見れば、ガクガクと両手で自分を抱きしめ震えていた。

「ヤナナァ〜」
「もしかして、寒いの?」
「ナップ・・・」

額に手を当ててみれば、熱はない。
風邪を引いたわけではなさそうだ。
ヒヨリはヤナップを抱き上げ、ノボリのところへ向かった。


くーるあんどほっと


部屋をノックすれば、ノボリの声が聞こえてきた。
ガチャ、と部屋のドアを開ければ、ノボリは本を読んでいた。
最近、ミステリーものにはまっているようだ。

「どうしました?」
「ノボリさん、ヤナップが寒いって言うの・・・」
「何ですって?」

ヒヨリが駆け寄ってくれば、読んでいた本を閉じて震えるヤナップを見た。
先ほどヒヨリがやったように、ヤナップの額に手を当てる。

「熱はなさそうですね・・・」
「冷えたのかな?ここのところ、冬の寒波のせいで寒いって天気予報で言ってたもんね」
「暖房を入れてみますか」

そう言うと、ノボリはリモコンのスイッチを入れた。
部屋が温まるには少し時間かかりそうだ。

「ナップぅ・・・」

ヤナップの震えは未だに収まる気配を見せない。

「前にヒヨリが寒いって言ってた時は確かわたくしが温めて差し上げましたね」
「もう、そんなこと言わなくていいって!」

ノボリの言葉にヒヨリは顔を赤らめた。
以前、ヒヨリも寒いと言ってヤナップを抱きしめていたらノボリに邪魔をされ、代わりにノボリがヒヨリをキスの嵐で温めたのだ。
その時はそれ以上のことはしていない。

「温める・・・その手がありましたね!ヒヨリ、ヤナップをこちらへ」
「うん。ヤナップ、ちょっとごめんね」
「ナップゥゥゥゥ」

少しの動きでも寒いのか、身体を震わす。
冷たい空気自体がヤナップを寒さへと追いやっているのかもしれない。
ヒヨリからヤナップを受け取ると、ノボリはベッドへと潜る。
ヒヨリにも手招きをして、ベッドへと誘導させる。
ノボリとは何度も一緒に寝ているが、近くでノボリを感じてしまうため、未だに慣れなかった。顔を赤らめ、布団にもぐる。

「申し訳ございません、ヤナップ。ですが、次期に温まります故、もう少し辛抱なさってください」
「ヤナァ・・・」

そっとヤナップを抱きしめた。

「さ、ヒヨリも」
「うん」

ノボリに言われるがままに、ヒヨリもヤナップを抱きしめる。
じんわりと伝わってくるノボリとヒヨリの温もり。
ヤナップの身体の震えも次第に落ち着いていく。

「ナァップ!」
「温かい?」
「ナップ!」

寒い時に人の温もりであたためあえば、暖かくなる。
これは本当のようだ。

「ふふ、効果てき面のようですね。こうして2人して抱きしめてあげていれば暖かいで御座いましょう」
「ナァップ!」

うん!、と言えば、ヤナップは目を閉じた。
少しすれば、規則正しい寝息が聞こえてきた。

「あら、寝ちゃった・・・」
「身体が温まったのでしょう。ヒヨリ、わたくし達も冷やさないようにして休みましょうか」
「はーい・・・んっ・・・」

ノボリが身体を起こして、ヒヨリの顔を上に向かせて口づける。
唇を離せば、ヒヨリの頬が赤くなった。
その頬をノボリが撫でる。頬の赤みが熱として伝わってきそうだ。

「温かいですね」
「ノボリさん・・・!」
「おやすみなさい、ヒヨリ」

そう言ってノボリも目を閉じた。
未だに赤みがひかない顔をヤナップの顔で隠し、ぎゅっとヤナップを抱きしめた。

「こんなんじゃ寝られないよ、ノボリさん・・・」

残ったのは、ドキドキとうるさい心臓の音。
その音のせいで、ヒヨリはしばらくの間寝付けそうになかった。

翌朝、少し寝不足気味なヒヨリと元気なヤナップの姿がそこにはあった。

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