出来上がったチョコを綺麗にラッピングすれば、世界に1つだけのチョコの完成だ。

「うん、綺麗にラッピングもできた!明日が楽しみだね、シャンデラ!」
「シャーン!」

シャンデラも嬉しそうにヒヨリの周りをうようよと周った。


愛情とありがとうのシルシ


朝。ノボリの家に泊まった時に目覚めるいつもの時間。
普段よりもウキウキ気分なのは、きっと今日がバレンタインデーだから。
軽い足取りで朝食を作っていれば、ノボリとヤナップがリビングへとやってきた。

「ノボリさん、おはよう!」
「おはようございます、ヒヨリ」
「シャン!」

どうやら昨晩は2人で寝たらしい。
ヒヨリはシャンデラと共に就寝したため、横ではシャンデラが朝食の用意を手伝っていた
ノボリとヤナップの姿を見れば、挨拶するかのようにその周りをうようよ浮いていた。

「ナップぅ・・・」

清々しい表情のノボリとは裏腹に、顔を下に向けて落ち込んだ様子を見せたヤナップ。

「あれ、ヤナップどうしたの?」
「ヤナナ・・・」
「昨日のことを気にしていらっしゃるので御座いますよ」
「昨日の・・・あぁ、あれね!」

チョコ作りの為に、ノボリとヤナップを追い出したヒヨリ。
ヤナップはそのことを未だに引きずっているようだった。
ヒヨリはヤナップの両脇に手を入れて抱き上げ、自分を視線を合わせた。
今にも泣き出しそうなその顔を見て、ヒヨリは微笑んだ。

「ヤナップ、昨日はごめんね?夜になればその理由わかるから、待っててくれる?」

そう言ってちゅ、とヤナップの額にキスを落とす。
一瞬驚いた表情を浮かべれば、その顔には笑顔が戻っていた。
そのまま腕の中にヤナップを抱けば、テーブルに向かい、4人で朝食をとるのだった。


―――――――


地下鉄。売店までの道のりを手をつないで歩いていく。

「そうだ、今日もノボリさんのお家に泊まってもいい?」
「構いませんが、着替えとかはどうなさるおつもりで?」
「持ってきてるから大丈夫だよ」

昨日からのお泊り。
その時にヒヨリは2日分の着替えを持ってきていた。
バレンタインデーの夜もノボリと一緒にいるために。

「左様でございますか」
「うん!」

他愛もない会話をしていれば、売店が見えてきた。
ヒヨリの職場だ。
店の前ではヨシエがそそくさと開店準備をしていた。

「おや、おはよう!ノボリさん。ヒヨリちゃん。ヤナップ」
「ヨシエ様、おはようございます」
「おはようございます」
「ヤナナップゥ!」

挨拶を交わせば、ノボリはヒヨリの手をすっと離した。

「ではヒヨリ、また後程・・・」

ヒヨリに背を向けて歩いていくノボリを、ヒヨリは呼び止めた。

「あ、待ってノボリさん」
「何でございま・・・」

振り向いたと同時に、頬に柔らかい感触が伝わってきた。
ヒヨリがノボリに背伸びをして、キスをしたのだった。
触れるだけのキスをして、唇を離せばいたずらっ子のように舌を出して笑っていた。
頬を抑えてノボリは固まった。

「へへ、いってらっしゃい」
「行ってまいります」

ノボリは帽子を深く被りなおすと、管轄室へと歩いていくのだった。
頬が微かに赤かったのを、ヒヨリは知るはずもなく。
てちてちとヨシエの元へ戻れば、ヨシエはにやにやとヒヨリを見ていた。

「ヒヨリちゃん、やるねぇ!!」
「今日は特別ですから・・・」
「今日はバレンタインデーだものね」
「はい」

ヨシエがそう言えば、ヒヨリは今夜のことを馳せる思いで頬を染めた。
ノボリにチョコを渡すためだったら、仕事も乗り越えられそうだ。


―――――――


ノボリの家で夕食を済ませれば、いつものように団らんとした時間が流れていた。
ヤナップは昨日と同じようにノボリと遊んでいる。
ヒヨリはノボリからシャンデラを借りて、自分が使わせてもらってる部屋から2つの箱を持ってきた。

「ノボリさん、ヤナップ」
「ナプ?」
「どうしました?」

ヒヨリの声に2人同時に振り向いた。
ヒヨリはにっこり微笑んで、2人に箱を差し出した。
箱にはそれぞれ”ヤナップへ”と”ノボリさんへ”と書いてあった。

「これ・・・今日、バレンタインだから」
「ありがとうございます、ヒヨリ」

お礼の言葉を言うと、ノボリは箱を受け取った。
ヤナップは首を傾げて箱を見ていた。

「その箱の中にはチョコが入ってるんだよ、ヤナップ」
「ヤナァ!!」

『チョコ』と聞いて、ヤナップは目を輝かせた。
ヒヨリは柔らかく微笑んだ。

「開けてご覧?」

しゅる、とラッピングのリボンを解いていく。
かさかさと包みを開けて、一つの箱が顔を出した。
そっと箱を開けてみれば、ヤナップの顔の形をしたチョコが顔を出した。
ほのかに大好物のオレンの実の匂いがする。
ヤナップは驚いた顔でヒヨリを見た。

「ヤナァ・・・・。ヤナ、ヤナナヤナナプ?」
「そうだよ。私が作ったんだよ」

これ、ヒヨリが作ったの?と聞けば、ヒヨリはにっこり笑って答えた。
ヤナップは目に涙を浮かべ、ヒヨリに抱き着いた。

「ヤナァ・・・。ヤナナァァァ!」

ヒヨリはヤナップを抱き留めると、目を細めてヤナップに微笑んだ。

「いつも私のこと、守ってくれてありがとう」
「ナァップ!」

そのお礼に、とヤナップはヒヨリの頬にキスを一つする。
ふとヤナップはヒヨリの後ろにいる存在に気が付いた。
その存在に首を傾げた。恥ずかしそうにシャンデラがこちらを見ていた。

「シャーン」
「シャンデラ、こっちにおいでよ」

ヒヨリにそう言われれば、ふよふよとこちらへやってきたシャンデラ。
不安そうにヒヨリの顔を見上げれば、ヒヨリはこくんと頷いた。
その合図でシャンデラはサイコキネシスを発動させ、1つの箱をノボリの前へ置いた。

「デラッシャーン」
「シャンデラ?これは・・・」

箱を見て、シャンデラを見るノボリ。
ヒヨリは微笑んで、ノボリに言った。

「シャンデラからノボリさんに。日頃の感謝をこめて・・・」
「わたくしに・・・?」
「シャン!」

そう聞けば、シャンデラはうん!と言うかのように鳴いた。

「ありがとうございます、シャンデラ。さ、2人とも向こうの部屋で遊んできなさい」

ノボリがそう言えば、ヤナップとシャンデラは嬉しそうに遊び部屋へと消えて行った。

「ヒヨリ」

ヒヨリの名前を呼び、自分の隣へ座るように促す。
誘われるようにノボリの隣に腰を下ろした。
頬にそっと触れて、キスを落とす。

「ん・・・」

少し長めのキスをすれば、ゆっくりと唇を離した。
そのままヒヨリを抱き寄せる。

「チョコ、ありがとうございます。昨日、頑張ってたのはこのためだったんですね」
「ばれてた・・・?」
「ええ」
「ノボリさん、甘いの好きかわからなかったから、甘さ控えめにしてみたんだ。ヤナップは甘いの大好きだから、隠し味に大好きなオレンの実入れたけどね」
「ヒヨリが作った物なら甘くても、甘さ控えめでも喜んで頂きますよ」
「へへ、ありがと」

そう言って、また一つキスをする。

「ヒヨリはご存知ですか?」
「何が?」
「甘いと言えば、バレンタインのチョコ以上に甘いものがあるというのを・・・」
「え?そんなのあるの?」
「ありますよ」

視界が反転する。
白い天井にノボリの顔が映った。
驚いて目をぱちくりとさせていれば、ノボリが顔を近づけてきた。
耳元に唇を寄せて囁いた。

「それはあなた自身で御座います」
「えっ・・・?んっ・・・!」

何度も何度も角度を変えて、ヒヨリの唇を堪能するノボリ。
時折甘い声を漏らせば、少し深めに口づける。
唇が離れ、切なそうにノボリの名前を呟く。

「ノボリ、さ・・・」
「申し訳ありませんが、今夜は我慢できそうにないで御座います」
「え・・・?」
「朝のあなたのキスで御座いますよ。あんな可愛いことをされたら、我慢が効かなくなってしまいますよ」

そう言いながら、ヒヨリの着ているブラウスに手をかけ始めた。

「ここじゃやだ・・・」
「わかりました」

ヒヨリを抱き上げキスをする。
そのまま、ノボリの部屋へと直行する。
その途中でシャンデラとヤナップがいる部屋を通る。
2人の甘い空気を察したシャンデラが、ヤナップに今日はここで寝ようと促しながら、布団を敷いていた。

部屋へやってくれば、ノボリはドアノブの鍵をかけた。
ベッドへ直進すると、ヒヨリをそこに下ろして、覆い被さった。

「ヒヨリ、今夜は甘い甘いあなたを頂きます」

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