急なお泊りのお誘いだったため、私は何も用意していない。
さすがにこのままノボリさんのお家に行くのは如何なものかと思う。
繋がれた手をきゅ、と握り私は口を開いた。

「の、ノボリさん」
「どうしました?」
「あのね、ノボリさんのお家に行く前に私の家に寄ってくれる?」
「どうしてです?」
「もう!お泊りの準備するためですよ!」
「わかりました。では、ヒヨリの家に向かうと致しましょう」


ドキドキ初体験


家に着けば、ヒヨリは急いで玄関を開けた。
すぐに戻るとノボリに言い、必要最低限の物をバッグに詰め込む。
バッグを片手に持ち、急ぎ足でノボリの元へと戻ってきた。

「お待たせ〜」
「随分早かったですね」
「そうかな?」
「ええ、お持ちしますよ」

ノボリはさりげなくお泊りセットが入っているカバンを手に持った。

「ありがとう」

そう言うとまた自然に手を取りあい歩き出す。
途中で近くのスーパーへと立ち寄った。
買い物かごを取り、ヒヨリはノボリに言った。

「ノボリさん、今日は何食べたい?」
「そうですね・・・。ヒヨリが作った物なら何でもよろしいですよ」
「それ、1番困る・・・」

そう言いながらも、ノボリは何でもいいと言ったので、
今日は肉じゃがにしようかなとヒヨリは思うのだった。
2人分の食材が入っている買い物袋を持ち、他愛もない話をすれば、
すぐにノボリの家に着いた。
ノボリはポケットから家の鍵を取り出し、施錠を解くとドアノブを回し扉を開けた。

「どうぞ」
「お邪魔します・・・」

ノボリに施され、玄関に足を踏み入れた。
付き合い始めて何度この家に泊まりに来ただろうか。
最後にノボリと2人きりでこの家にいたのはいつだったろうか。
記憶を辿ればヤナップとオレンの実の木でお別れした時以来だと思う。
いつもはシャンデラとヤナップも一緒のため、2人きりとは言えないだろう。
だが、今日はこの2匹も家にはいない。


―――今日は本当にノボリさんと二人きり、なんだ。


「―――・・・っ」

急に顔が熱くなる。

「ヒヨリ?」
「え、あ!・・・なんでもないですっ!!すぐご飯作りますね!!」

顔を覗こうとしたノボリの横を通ろうとした時、ノボリに腕を引っ張られバランスを崩した。

「わっ」

そのままの重力でノボリの腕の中へと収まる。
後ろから抱きしめられ、耳元で囁かれる。

「緊張、してるのですか・・・?」
「う、ん。いつもはヤナップやシャンデラが一緒だから。ノボリさんとこういう2人きりってあんまりなかったなって思ったら急に心臓ドキドキしてきて・・・」
「奇遇ですね。わたくしもで御座いますよ」
「ノボリさんも?」
「ええ」

ノボリはヒヨリの頬にそっとキスをすれば、
名残惜しそうにヒヨリの身体を離した。

「今日はずっと2人でいられるのです。焦ることもないでしょう。今はヒヨリの手料理が食べたいで御座います」
「うん・・・わかった。頑張って作るね」
「わたくしはお風呂を沸かしてきますので」
「はい」

そう言うとヒヨリはキッチン、ノボリはお風呂場へと足を運んで行った。


ドキドキ初体験


夕食を終えると、ノボリがヒヨリに風呂へ入るように促した。
その言葉に甘えて、先にお風呂に入ったヒヨリ。
部屋へ行けば、ノボリが本を読んでいた。

「お風呂ありがとう」
「いえいえ、ではわたくしもお風呂に行ってきます」
「うん」

ノボリがお風呂へ消えていくのを確認すると、ヒヨリはノボリのベッドへと倒れこんだ。
キシ、と重みが加わった音がした。

「今日、ノボリさんと・・・」

とうとうしちゃうんだ。
これから起こるであろうことを頭の中で妄想してしまう。
自分の破廉恥な姿を浮かべては、顔を赤らめ布団に顔を埋めてしまう。
そんな考えをずっとしていれば、ノボリがお風呂から上がってきたようだ。

「ヒヨリ?」
「あ、ノボリさん!」

ノボリに名前を呼ばれ、赤いままの顔をノボリに向けて起き上がる。
その顔を見て、ノボリはクスリと笑う。

「顔、赤いですよ?」

ノボリには全て見透かされているようで。
視線を下へ向ければ、ノボリの手が肩へと伸びてくる。

「うう、言わないで・・・え?」
「ヒヨリ・・・」

顔を上げれば妖艶な顔がそこにはあった。
低い声で名前を呼ばれてヒヨリは胸が高鳴った。
ポスン、とそのままベッドへと押し倒される。
ベッドに2人分の重みが乗った。
ノボリはヒヨリの頬に手を伸ばし、顎のラインをなぞった。
それにヒヨリはくすぐったさに顔を背ける。

「ひゃっ」

くすぐったくてノボリの手を取ろうとするが、逆に掴まれベッドへと縫い付けられる。
ノボリはそのままヒヨリに口づけを落とした。

「んっ・・・」

最初は優しく触れるだけ。

「ヒヨリ」

愛しそうにヒヨリの名前を呼べば、もう1度口づける。

「ん・・・ん、んんっ・・・!」

何度も何度も角度を変えて、だんだんと深くなっていく口づけ。
やめてもらおうともがこうとするが、身体の自由をノボリに奪われてしまっているため、動けずにいる。
ヒヨリは耐えられなくなり、うっすらと口を開いた。
ノボリはその隙を見計らい、舌をヒヨリの口内へと侵入させた。

「ん、ふぅ・・・ぁ・・・」

逃げ回るヒヨリの舌を絡めとってちゅと吸ってやれば、またヒヨリの口から甘い声が漏れる。

「ふ・・・」

やっと離れた唇には銀色の糸が繋がれていた。
ヒヨリは酸素を求め、肩を上下にさせている。
その目はとろんとしていて、ノボリを煽るのには十分だった。

「ハァ・・・ハァ・・・ノボリ、さん」
「なんでしょうか?」
「優しく、してくださいね・・・?」
「はい。仰せのままに・・・」

本当はもっと早くからヒヨリとこうしたかった。
いつもはヤナップが一緒にいるため、このような事をヤナップのいる前でするには気が引けた。
それにヒヨリの好きな人とはこういうことしなくても、ずっと傍にいてくれればいいという純粋な気持ちもある。その気持ちをノボリは大事にしたかった。
今回、ヤナップもシャンデラもここにはいない。こんなチャンスを逃したくない。
思い切ってヒヨリに抱きたいと申し出てみれば、ヒヨリはすんなりと受け入れてくれた。
それがまた、ノボリは嬉しかった。初めてに自分を選んでくれたということに。

ノボリはもう一度ヒヨリの唇にキスを落とすと、着ているパジャマへと手を伸ばすのだった。

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