半減

「ホラ、」
「ありがとう。」


ホカホカのホットドックをインゴに手渡されて、ソレにかぶりつく。
大して美味しくないはずなのに、なんだか無償に美味しく感じてインゴに美味しいよ!!って笑顔で言うと「そうか。」と短い返事が返ってきた。

今日は初デートで遊園地に来てる。
大好きな絶叫系の乗り物を中心に乗ってはしゃぐ私をお父さんみたいな終始微妙な顔で見つめるインゴ。
おい、まだ乗るのかよ…と既にお疲れ気味の彼を引き摺りまわすように歩かせて、近くのベンチで休憩を取っているのだ。

ちょうどお昼時だね!!と話をしていたらインゴがホットドックを買ってきてくれたのだ。


「おい。」
「ん?」


ふと呼ばれて隣のインゴを見ると、はぁと短い溜息を吐いて「ちゃんと食え」と言って口元を親指で拭われる。そのまま拭った親指をちゅうとインゴが舐めて「ケチャップ、ついてた」と教えてくれる。
はしゃぎすぎたのだろうか…ちょっと恥ずかしくて「ご、ごめん」とだけ言って顔を逸らすとインゴは特に何も言わずに遊園地のマップを広げた。


「次、俺の行きたいところでいいだろ。」
「え、うんいいよ。」


珍しい…インゴが行きたいところなんて。
そう思っていると、二ヤリとインゴが口元を引き上げて笑った。
嫌な予感しかしない!!と直感が悟ったと同時に、インゴが私の腕をガシリを掴んだ。

引きつった笑いを浮かべる私にインゴはとても嬉しそうに笑って私を立ち上がらせると「行くぞ」と私を急かした。
今度はズルズルと私が引き摺られるような体制で連れてこられたのは『おばけやしき』。
やっぱりと言うか何でというか…ある程度想像していただけあって差ほどビックリはしていないけれど、入りたくない。

入る気満々なインゴはちらほらと並ぶ人の後ろへ私を連れていって、私が逃げられないように「手でも繋いでみるか」と白々しく私の手を掴む。
半分睨むような形でインゴを見上げると「散々振り回されたんだ。仕返しくらいさせろ。」と返される。


「無理…本当に無理!!」
「無理だと思うから無理なんだろ。」


さも面白そうにそう言って笑うインゴがとても憎くて掴まれた手を必死に振りほどこうともがく。勿論、そんなもの通用するわけなくてインゴはしれっとしたまま私の手を離そうとしてくれない。
逃げるに逃げられないまま、ついに私達の番となってしまった。
なかなか一歩を踏み出さない私をインゴがニヤニヤして笑って振り返る。

楽しそうだな、この野郎!!と再び睨むと、インゴがふと掴んでいた手を自分の指に絡めて優しく手を引いてくれる。
な、なんだ!?と思っているとインゴが少しだけ顔を赤らめて「く、暗いだろ。掴んでるだけじゃ、離れるかもしれないからな。」と呟いた。


半減

ちょっとだけ怖くなくなった。


―――――――

「もにゃい」のマイク様より
3万ヒットリクエストをさせていただきました。
こちら様のサイト連載の「E-lover」のインゴと夢主に一目ぼれ。
連載が完結を迎えたとのことで、続編のリクエストをさせていただきました。
夢主の努力が報われるお話が大好きで、最後の最後で涙をもらってしまいました。
マイク様、この度は3万ヒットおめでとうございます!
そしてこんなに素敵な続編のお話を書いてくださってありがとうございました!
本人様のサイトには当サイトのリンクから飛べます。

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