通されたのは、この間私が連れてこられた管理室。
この間、一緒にいた白い服の車掌さんがいない。
不思議に思い、ノボリさんに聞いてみた。

「弟のクダリは今、見回りに行っております」

あの人、弟さんだったんだ・・・。

「さ、こちらの椅子におかけください」
「失礼します」

モニターの前の椅子に座らされる。
ノボリはヒヨリにちょっと失礼、というと、奥の部屋へ消えてしまった。
少しして、戻って来る。
手に何かを持って。
ヒヨリの前に来ると、彼女にそれを差し出した。

「ヒヨリ様、こちらを」
「これは・・・?」

渡されたのは、一枚のカードとそれを入れるパスケース。

「従業員用のパスにございます。こちらを係りの者にお見せすれば、管理室に入ることができます故・・・」

ノボリはにっこりとほほ笑んだ。
ヒヨリはノボリの手にあるカードとパスケースを受け取った。

「あ、ありがとうございます」


―――――――


あの後、すぐにライブキャスターがなった。
ノボリさんにごめんなさいと一言いれて、ライブキャスターを見ると、
電話の主は親友からのものだった。
電話に出ると、急に会おうと言われ、待ち合わせ場所に来ていた。
待ち合わせのカフェに足を運ぶ。
店に入れば既に彼女は来ていて、ヒヨリの姿を見ると手を振った。

「やっほー、ヒヨリ!」
「もう、どうしたの?急に呼び出して・・・」

親友の突然の呼び出しに苦笑するが、内心は嬉しくもあった。
彼女は、自分のことを一番に理解してくれているのだから。
向かいの椅子に座る。
店員がヒヨリにオーダーを聞いてきた。
ヒヨリはホットココアを頼むと、顔を親友に向けた。
親友は嬉しそうに口を開いた。

「いや、最近、彼氏とはどうしてるのかなって・・・」
「あ・・・フラれた」


―――そう言えば、話してなかった!


やっちゃった、と表情を固めたヒヨリ。
目の前の親友は、口をあんぐりと開いて、わなわな震えていた。

「えぇえええ!?」
「だって、あの人、身体目的だったんだもの」
「・・・そう、なんだ」

驚いて、椅子から立ち上がれる親友。
理由を離せば、納得してくれた様子で椅子に座った。
彼女はヒヨリが好きな人が傍にいてくれればそれだけでいいという概念を知っている。

「でもね」
「ん?」
「フラれた私を慰めてくれた人がいるんだ」
「誰なの?」
「確か、名前はノボリさんって言ってたなぁ」
「えぇえええ〜!?」
「な、何!?」

また、驚いて椅子から立ちあがる。
ヒヨリの言ったことがそんなにも驚くことなのだろうか。

「ノボリさんって、サブウェイマスターの!?」
「サブウェイマスター?何それ?」
「ヒヨリ知らないの!?」

首を縦に振れば、親友はカバンから一つの雑誌を取り出した。
雑誌を開くと、ページをめくり、とあるページをヒヨリに見せてきた。

「ほら。これが地下鉄。こっちがノボリさんの特集」
「最高責任者・・・うそ・・・」

そのページには、どかどかと地下鉄の特集が載っていた。
そこにはインタビューを受ける、ノボリとクダリが写っていた。

「で、ヒヨリ」
「ん?」
「ノボリさんのこと、好きになったの?」
「違うよ。でも、2度も助けてもらっちゃったから、今度お礼しに行くんだ」
「お礼?」
「うん。ほら、パスももらったんだ」

そう言ってパスを見せると、ヒヨリははにかむように微笑んだ。
親友はその顔を見て、思う。


―――ヒヨリ、気付いてないんだね。


うっすらと頬を赤く染め、恋する女の子の顔になっている自分に。
そう、ヒヨリの新しい恋が始まろうとしていた。



[Back]

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -