「ん・・・?」

気が付くと、見慣れない場所にヒヨリはいた。
目をうっすら開ければ、目の前には2人組の男。

「目が覚めたか?」
「ここは・・・?え?」

腕がうまく動かない。
後ろを見れば、両手首は固定されて動けなくされていた。

辺りを見回す。どうやらここは木造の建物のようだ。
どうして自分がこんなところにいるのかがよくわからない。


―――あれ?私、・・・。


必死に記憶をたどるヒヨリ。
最後におぼえているのは、ロッカールームの前。
そこからの記憶がない。
どうして、と考えていると、目の前の男がヒヨリの前でしゃがみこんだ。
そして、ヒヨリの顎を持ち上げて笑った。

「悪いがあんたには少し大人しくしていてもらうよ」
「どうしてこんなことを・・・?」
「あんたの彼氏に相当惚れ込んだ女がいてな。そいつの頼みなんだよ・・・」
「そんな・・・!」

ヒヨリの表情が曇っていく。
男はさらに続けた。

「ノボリだっけか。そいつに近づくにはあんたが邪魔らしくて・・・」

それを聞いたヒヨリは目に涙を浮かべ始めた。

「それでこんなことしたの?酷い、酷いよ!!私をノボリさんのところに返してよ!!」
「ほう、威勢がいいね。気の強い女も好きだよ」
「・・・!」

もう一人の男がそっと、ヒヨリの耳元で囁いた。

「今頃、あいつはノボリとお楽しみなんじゃねぇか?あんたも俺らと楽しいことするか?」

背筋がぞくりとした。
ヒヨリは自分に鞭を打って、男を見据えた。

「あなたたち、こんなことして悲しくないの・・・?」
「・・・え?」

ヒヨリの悲しそうな表情に、男2人は顔を合わせた。


―――――――


その頃、ノボリはヤナップを連れ、山の中を走っていた。
目指すはふもとの小屋。

「ヤナップ、急ぎましょう!」
「ナップ!!」

どれだけ走ったのだろうか。
日ももう、暮れ始めている。


―――ヒヨリ、ヒヨリ!どうか、ご無事でいてください!!


走っていれば、一つの小屋を見つけた。
小屋には明かりがついていた。

「あれですね・・・!」
「ヤナナ・・・!」

2人は顔を合わせると、小屋へ向かってスパートをかける。
だんだん近づいていく小屋のドア。
勢いよくドアノブを回して、扉を開けた。

「ヒヨリ!!」
「ヤナナ!!」
「ノボリさん、ヤナップ・・・」

ヒヨリがほっとした表情でノボリとヤナップの名前を呟いた。
ノボリが目にしたのは、ヒヨリの耳元に顔を寄せている男の姿と、ヒヨリの顎に指を添えて顔を上げさせてる男の姿だった。
わなわなと、怒りが込みあがってくる。
それはヤナップも同じことだった。
男を冷徹な目で見つめて言った。

「あなた達、ヒヨリに何を・・・」
「ヤナァ・・・」

男は驚いて、ヒヨリに触れていた手を離して立ち上がった。

「お前!あいつと仲良くやってたんじゃ・・・!?」
「今頃はジュンサー様に確保されてるのではないでしょうかねぇ・・・」
「な・・・んだと!?」

ノボリの言葉に男の顔は青ざめていく。
このままでは自分達も捕まってしまうのではないかと。

「あなた方も観念なさい」
「ちっ。来い!!」
「きゃっ!」

男はヒヨリの腕を掴むと、走って小屋を出ていく。

「ヒヨリ!」
「ヤナナ!!」
「くっ、ガマゲロゲ!!」
「ミルホッグ!!」

小屋を出たところで、男はモンスターボールを投げた。
出てきたのは、ガマゲロゲとミルホッグだった。

「シャンデラ、頼みましたよ!」
「シャーン!」

ノボリもシャンデラの入ったモンスターボールを投げた。
白い光と共に、シャンデラが出てきた。

「ヤナァ・・・!」

ヤナップも相手を威嚇している。

「ガマゲロゲ、泥爆弾!!」
「ナァプププププ!!」

泥爆弾とタネマシンガンがぶつかり合う。
それは爆発を起こし、あたりに爆風を巻き起こした。
吹き飛ばされそうになるが、それを何とか持ちこたえた。

「シャンデラ、鬼火です!」
「シャー!!」
「ミルホッグ、10万ボルト!!」
「ヤナァ!!」

鬼火を交わしたミルホッグの10万ボルトがヤナップに命中する。
それを見たヒヨリが眉を八の字にして叫んだ。

「ヤナップ!!」
「動くな!!」
「離して!!ヤナップが・・・ヤナップが・・・」

ヒヨリの脳裏によぎったのは、ペンドラーの時のこと。
また、あの時みたいにヤナップが動かなくなったら。


―――そんなの絶対やだ!!


ヒヨリの目尻には涙が滲み始めていた。

「ヤナァ・・・」

10万ボルトをまともに受けたのか、ヤナップはしかめた表情で立ち上がる。
それを心配そうにみていたヒヨリ。

「シャンデラ、サイコキネシス!!」
「シャーン!!」

サイコキネシスがミルホッグとガマゲロゲを捕えた。

「ミルホ!」
「ガマァ・・・」

そのまま、向こうの木の幹に宛がった。
強い衝撃を受けたのか、2匹は倒れる。
顔をしかめながら、最後の力で立ち上がったガマゲロゲとミルホッグ。
その光景を見たヒヨリはヤナップを見据えた。

「ヤナップ・・・」

今すぐヤナップの元へ行きたい。
だが、この状況ではどうすることもできない。

「ヤナップ、大丈夫ですか!?」
「ヤナ!」

ノボリの言葉にヤナップは頷いた。
どうやら、ダメージは大きくなさそうだ。
それを見て、ヒヨリはほっと胸を撫で下ろした。

ノボリ、シャンデラ、ヤナップは目の前の敵を見据えた。

「行きますよ!シャンデラ、サイコキネシス!!」
「ヤナァァァァァァ!!」

サイコキネシスがガマゲロゲとミルホッグを捕えた。
そこに、ヤナップのリーフストームが命中した。
2匹のコンビネーションでガマゲロゲとミルホッグは戦闘不能になるのだった。


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