私は今ここにはいるはずのない存在に心底驚いた。
そして、ヤナップと一緒にいたノボリさんとクダリさんにも。
「ヤナップ、どうしてここに?」
「ヒヨリ。ヤナップはあなたと一緒にいるためにここに来たのでございますよ」
「え、それって・・・」
「ヤナップは仲間といるより、あなたを選んだ・・・それだけでございます」
「!!」
ノボリさんの言葉に目尻が熱くなるのを感じた。
―――――――
「ヤナァァァ」
ヤナップは唸り声を上げて、ペンドラーとデンチュラを睨み付けていた。
さっきの爆発音で、ギャラリーが集まってくる。
そんなこともお構いなしに、ケイゴはフッと余裕の笑みを漏らした。
「ヤナップ・・・か。なんか弱そうなポケモンだな・・・」
「この子を甘く見ない方がいいわよ・・・」
ヤナップを馬鹿にするような発言にヒヨリは眉間に皺を寄せた。
この子の強さは自分が一番よく知っているからだ。
「何だと…」
「ナプ、ナプナップナプププヤナナナナナ!!!」
ヤナップはこめかみに青筋を立てて、手を前にびしっと出し、片足を踏みつけながら何かを叫ぶ。
ヒヨリには何を言っているかよくわからなかったが。
「ヒヨリに触れていいのはノボリと僕だけ・・・だと・・・デンチュラ!!!」
「チュラァァァア!」
「ペンドラァァァ」
ケイゴにはわかったらしい。
ヤナップ、何言ってるのと思いながらもヒヨリは嬉しそうに笑った。
デンチュラとペンドラーもヤナップを威嚇していた。
ペンドラーだけは威嚇の仕方が明らかに違った。
「え、ペンドラー、あのヤナップも知ってるのか?」
「ドラドラ!」
ペンドラーはケイゴに頷いた。
「ならペンドラー!ヤナップはお前に任せる!」
ケイゴがそう言えば、ペンドラーが攻撃態勢に入った。
ヒヨリの記憶が正しければ、あの態勢は・・・。
「ヤナップ、毒針に気を付けて!!」
ヒヨリがそう言ったと同時に、ペンドラーが毒針を発射した。
ヤナップはそれを交わして、ペンドラーの懐に飛び込もうとした。
交わした良いが、毒針の威力は止まるところを知らない。
それどころか、毒針はヒヨリめがけて飛んでいく。
「え?」
「シャンデラ、鬼火!!」
ノボリがボールを投げたと同時に指示を出した。
出てきたシャンデラが頭から鬼火を繰り出す。
鬼火の炎が毒針の威力を相殺した。
「ノボリさん、ありがとう!」
「どうしたしまして。ヤナップ、ヒヨリはわたくしとシャンデラが!」
ノボリの言葉にヤナップは頷く。
「ナァップ!ヤナァァァァァナップ!!」
ペンドラーに向かって、最大パワーで目覚めるパワーを繰り出した。
爆発音を起こし、あたりは砂煙にまみれた。
それが収まり、ペンドラーの身体が倒れているのが見えた。
どうやら至近距離からの攻撃だったようで、ペンドラーは即戦闘不能になった。
「うまい!」
クダリが歓声を上げた。ノボリも笑みを漏らす。
ケイゴは一歩たじろいた。
「ひ、怯むな。デンチュラ、10万ボルト!!」
「チュラァァアァ!」
10万ボルトがヤナップを襲うが、ヤナップは素早く10万ボルトを交わした。
タネマシンガンを発射させる。
デンチュラにタネマシンガンが当たれば、デンチュラは怯んだ。
その隙を見計らい、ヤナップは身体を捻らせた。
大技が飛び出す瞬間だ。
「ヤナァァァァァァ!!」
ヤナップを渦巻くたくさんの葉。
その葉は刃となり、嵐のようにデンチュラへと向かう。
「あれは、リーフストーム!!」
「リーフストーム?」
「草タイプの中でもすごい威力を持つと言われている技でございます」
「ほへ〜」
クダリが叫べば、ヒヨリは頭に疑問詞を浮かべる。
ノボリの技の解説にヒヨリは関心した。
「ナァップ!」
大技が決まり、デンチュラが吹っ飛ばされて戦闘不能になる。
ケイゴは舌打ちをし、2匹をモンスターボールに戻した。
「畜生、覚えてろよ!!」
捨て台詞を吐き、ケイゴは走り去ってしまった。
ヤナップ、ヤナップ、とギャラリーからは歓声と拍手が沸き起こる。
ヤナップは身体を反転させて、キラキラとした目でヒヨリを見た。
「ヤナァ・・・」
「や、ヤナップ・・・」
「ヒヨリ」
ノボリがヒヨリの肩にそっと手を置く。
顔を見上げれば、ノボリは頷いた。
ヤナップが足早にヒヨリの元へ走っていく。
その光景にヒヨリは目を潤ませる。
「ヤナナップ!」
「ヤナップ!!」
お互いの名前を呼びあい、抱きしめあった。
その光景はスローモーションのように流れる。
「ヤナァ・・ヤナァ・・・」
嬉しそうにヒヨリの頬をすり寄ったヤナップ。
ヒヨリはヤナップの頭に手を添える。
目尻が熱くなるのを感じ、ヒヨリはそっと目を閉じた。
「ふぇ・・・」
一筋の涙が流れた。
「おめでとうございます、ヒヨリ!」
「良かったね、ヒヨリちゃん!」
ノボリとクダリがそう言えば、ギャラリーも2人を祝福するかのように、ヒヨリとヤナップの名前を交互に呼ぶのだった。
その歓声と拍手は止む気配を見せない。
一度は離れてしまったヒヨリとヤナップ。
それはお互いの心を固く結んだのであった。
I love you
(これからはずっと一緒だよ)
[
Back]