―――フラれ、ちゃった。
とぼとぼ、と駅のホームを歩いていく。
目の前にある、ベンチに座り顔を下に向けると、先ほどの光景が頭をよぎる。
『・・・っ!嫌・・・!』
『ごめん。オレ、お前のこと抱けないのなら、もうお前と付き合えない」
『・・・え?』
傍にいてくれればそれだけで良かったのに。
結局は己の欲の為に自分と付き合っていたことになる。
私は彼にバカぁ!、と平手打ちをして、彼の家を飛び出した。
で、今に至る。
考えてみれば、彼は身体ばっかり要求して、その度に私は拒んで。
あ、やだ。涙出てきちゃった。
「お客様、どうかされましたでしょうか?」
声をかけられて顔をあげれば、黒いコートに身を包んだ男がヒヨリを見下ろしていた。
格好からすると、ここの駅員のようだ。
「お隣、よろしいですか?」
ヒヨリが頷くと、男はゆっくりと腰を下ろす。
そして、ヒヨリの頭にそっと手を置く。
「何があったかは知りませんが、女性に涙は似合いませんよ。
ですが、つらいときは思い切り泣くのもいいのかもしれませんね」
安心したのか、ヒヨリの目からは大粒の涙が出てきた。
男はヒヨリの顔を自分の肩へ引き寄せた。
「っく・・・っく!」
見ず知らずの人にこうやって肩を借りるのもおかしい話だけど。
今だけはこうすることを許してください。
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