今日は朝からクッキー作り。
ヒヨリはエプロンを身に纏い、ボウルと泡だて器を手に持っていた。
今日作るのは、ヤナップも好きなオレンの実の味がするクッキー。
甘さ控え目でこのクッキーはノボリとクダリも好きだったりする。
卵をいくつか割り、解きほぐす。
ヤナップはドキドキしながら、シンクの上でヒヨリが作っている様を見ていた。
その横には小麦粉とオレンの実が置いてあった。

「ヤナップ、そこの小麦粉取って?」
「ナプ」

ヒヨリがそう言えば、ヤナップは横に置いてあった小麦粉をヒヨリに手渡した。
ありがとう、と言えば嬉しそうに両手を上げた。
小麦粉の開け口を逆さにし、少しずつボウルの中に小麦粉を入れていく。
ちまちまとしか出てこない小麦粉の袋に少しだけ力を入れれば、どっと勢いで小麦粉がボウルに注がれた。辺りには小麦粉の噴煙が舞い上がる。
それに巻き込まれたヒヨリとヤナップは2人一緒に咳き込んだ。

「「けほけほ/ナプナプ」」

噴煙が治まれば、ヒヨリとヤナップはお互いの顔を見た。

「大丈夫、ヤナッ・・・」
「ヤナ?」

ヤナップ、と言おうとしたヒヨリにヤナップは首を傾げた。
ヒヨリの鼻の頭には小麦粉がうっすらとついており、それはヤナップとて同じこと。
ヤナップの方が若干ついてる箇所が多い。
頭の草木の部分、鼻の頭、ほっぺとヒヨリより少しばかり酷かった。
顔全体がうっすらと白くも見える。
お互いの顔を見て、ヒヨリとヤナップは吹き出した。

「ぷっ・・・あはは!」
「ヤナナ!!」

2人の笑いが台所に響き渡る。


―――――――


「よし、あとは型を取るだけ!」
「ヤナァ?」

クッキーの生地が出来上がり、ヒヨリはクッキーの型を取り出した。
首を傾げているヤナップにクッキーの型を見せながらヒヨリは言った。

「やってみる?」
「ナップ!」

ヤナップが鳴けば、ヒヨリはヤナップに型を渡す。
伸ばし棒でクッキー専用のまな板に生地を伸ばす。
その光景をヤナップは目をキラキラさせながら見ていた。

「ここにこうやって型を押すのよ?抜いたらこの鉄板にクッキーを置いて?」

ヒヨリが生地に型を押し付けて引っこ抜いた。
それを適度な油とクッキングシートを乗せた鉄板の上に置く。
指の腹を使って、生地を型からゆっくりと優しく外す。
ヤナップはヒヨリの行動を一部始終見逃さずに見ていた。

「できた。さ、ヤナップ!やってみて?」
「ナップ!」

ヤナップが生地に型を押し付けた。それを引っこ抜き、ヒヨリと同じようにしてみる。
恐る恐る手で生地を押しながら、鉄板の上に生地を落とした。

「ナップ!」
「すごい、初めての割には上手にできたね!」

ヒヨリはそう言って、ヤナップの頭を撫でた。
ヤナップは目をキラキラさせて喜んだ。

「さ、この調子で抜いていこうか」
「ナップ!」

ヒヨリとヤナップは型をどんどん抜いていった。
ある程度のクッキーの型が取れた頃だった。

「そうだヤナップの型のクッキーも焼こうか」
「ナァップ!」

そう言うと、ヒヨリはヤナップの頭、耳、鼻、目のパーツを作って
鉄板に取り付けた。これだけは大きさも違うため、別の鉄板で焼くことになる。
ヒヨリはそれらをオーブンに入れた。
時間をセットする。

「出来上がりが楽しみだね!」
「ナァップ!」

そう言うと、ヒヨリとヤナップは少しばかりの休憩をと、ヤナップと一緒にくつろぐのだった。


―――ピピピ・・・。


タイマーが鳴り響いた。
ヒヨリは足早にオーブンへ向かう。
オーブンを開ければ、小麦色に焼けたクッキーが顔を出していた。

「わぁ、うまくいったよ!」

そう言いながらオーブンから鉄板を取り出した。
ヤナップにも見せれば、ヤナップは嬉しそうに鳴いた。
ヒヨリはヤナップ型のクッキーが入っているオーブンを見れば、あと5分くらいで焼きあがりそうな色だった。

それから5分たったころ、ヒヨリはヤナップ型のクッキーの入っているオーブンを開けた。
綺麗な小麦色でクッキーが出来上がっている。

「できたよ、ヤナップ!」
「ナァップ!」

鉄板をシンクの上に置いて、ヤナップのクッキーを見つめた。


―――このヤナップのクッキー、幸せそう・・・。


ぽろぽろ。
ヒヨリの目からは涙が零れ落ちた。

「ナップ!?」

それを見てヤナップはヒヨリの肩によじ登った。
肩からヒヨリの顔を覗きこみ、涙をそっと拭いてやる。

「ごめ・・・ヤナップ・・・」
「ナップ?」

次から次へと溢れる涙。
それは止まる術を知らなくて。
ヒヨリはきゅ、とヤナップを抱きしめた。


I love you
(ヤナップが私のポケモンになってくれたらどんなに嬉しいことだろうか)



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