ノボリさんの寝室にある本を整理していると、そこから一枚の紙切れが落ちてきた。
パートナーのヤナップが紙切れを拾い、私に渡してくれた。

「ありがとう、ヤナップ」
「ナップ!」

ヤナップは嬉しそうに声を上げた。
手の感触からして、紙というよりは写真だった。
写真の表を見ると、そこには私とノボリさんが笑顔で写っていた。

「わぁ・・・」
「ヒヨリ。リビングにいないと思ったら、ここでしたか」
「ノボリさん、おかえりなさい」

タイミングよく、部屋のドアが開かれた。
立っていたのは、この家の主のノボリさんだった。
ノボリさんの姿がわかると、ヤナップは一目散に彼めがけて走っていく。
しゃがみこみ、ヤナップの頭を撫でて”戻りましたよ、ヤナップ”とノボリさんは呟く。
そして、視線を私に向けた。

「まったく、何度申せばやめていただけるのですか。
 ”さん”付けで呼ぶのはおやめくださいと申して・・・おや?」

ノボリさんも私の手に持っている写真に気が付いた様子。

「懐かしいでしょ?」
「これはまた・・・懐かしいですね」

写真を見て、懐かしそうに微笑む。
この写真の背景には、桜の木。
季節は春。

私とノボリさんが出会い、そして恋に落ちた季節だった―――。



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