「まずはヨシエさんのところに行こうね」
「ナップ?」

ヤナップは”誰?”と言うように首を傾げた。

「あ、ヤナップはヨシエさんに会うのは初めてだったんだよね」

ヒヨリの言葉にヤナップはうんうんと首を縦に振る。

「ヨシエさん、とっても良い人だよ。ヤナップも仲良くなってくれるといいなぁ」
「ナァップ!」

ヒヨリが言うのだから間違いないだろう。
ヤナップはどんな人なのだろうと想像しながら、嬉しく鳴いた。


I love you


売店の前で自分のよく知る人物がいるのが見えたヒヨリはその人物の名前を呼ぶ。

「ヨシエさーん」

呼ばれた方へ視線を向ければ、大きく手を振り自分の名前を呼ぶヒヨリの姿があった。

「ヒヨリちゃんじゃないか。どうしたんだい、今日は休みだろ?」
「これからノボリさんとクダリさんのところに行くんです〜」


そう言うと、ヒヨリはヤナップを抱えてる腕を離してヨシエにバスケットを見せた。

「そうかそうか。おや、このヤナップはもしかして・・・?」
「あ、もしかしてノボリさんから聞いてました?」
「もちろんだよ!具合はもう良いのかい?」

ヨシエがヤナップに聞けば、ヤナップは両手を上げて「大丈夫!」と言っているように鳴く。

「ヤナップはこう言ってますけど、まだ完全には治りきってないみたいなので、私がしばらく面倒をみることになったんです」

それを聞くと、ヨシエはヤナップの頭に手を伸ばした。
やさしく撫でてやれば、ヤナップは気持ちよさそうに鳴く。
ヒヨリはその光景に目を細める。

「そうかい。頑張るんだよ」
「はい。ヤナップ、こちらがさっき話したヨシエさんだよ。ご挨拶して?」
「ナップ!」

ヒヨリが言えば、ヤナップは片手を上げて鳴いた。

「おやおや、礼儀のいいポケモンだね」
「ヤナァ・・・」

ヨシエに言われ、顔を赤らめるヤナップ。
とても照れくさそうだ。
すると、後ろから誰かに声をかけられた。

「あれ?ヒヨリちゃんじゃないか・・・!」
「本当だ」

振り向けば、常連の駅員だった。
2人の駅員もヒヨリとヤナップの元へ歩み寄る。売店に来てるということは、今は休憩時間のようだ。

「こんにちわ」
「今日は休みだって聞いてたけど・・・」
「これからノボリさんとクダリさんのところに行くんです」

そう言うと、駅員にバスケットを見せる。

「いいなぁ・・・俺もヒヨリちゃんと一緒にお茶したいよ・・・」
「おい、それはまずいと思うぞ・・・」
「そうだったな・・・」
「え、何でです?」
「それは内緒、な」
「ふえ?」
「ナップ?」

羨ましそうに言う駅員。
しかし、自分とお茶をするのは非常にまずいと言う駅員。2人の話の意図が見えないヒヨリは首を傾げるだけだった。
それは、ヤナップとて同じだった。
駅員の1人がヤナップに気が付き、大きい声を上げた。

「お、ヤナップじゃないか!」
「本当だ、可愛いな!」
「ナップ!?」

ヒヨリの腕からヤナップをひょい、と抱き上げると、おもむろにヤナップを見つめる駅員。
可愛いな、と言ってはいるが、突然の出来事にヤナップは瞳を潤ませた。

「ヤナナ・・・ヤァァァップ!!!」
「え、おい!?」
「ちょ、ヤナップ!?」

終いには泣き出し、駅員の腕で暴れるヤナップ。
これにはヒヨリも目をぎょっとさせた。

「ナップ、ナップ」
「ヒヨリちゃん、どうすれば・・・」

暴れ続けるヤナップを目に、焦る駅員はヒヨリに助けを求めた。

「貸してください」
「ヤナップ、大丈夫だよ・・・私がついてるから・・・」

駅員からヤナップを受け取ると、ヒヨリはヤナップを抱きしめ優しく背中を叩いた。

「ナップ・・・?」

自分が安心する声が聞こえてくる。
泣くのをやめ、ヒヨリを見上げるヤナップ。
ヒヨリは大丈夫、と言って、笑った。
ヤナップの顔からは涙は消え、ヒヨリにつられて笑っている姿があった。それを見て、駅員はほっと胸をなで下ろした。

「び、びっくりしたぁ・・・」
「その子、結構人見知りなのかな?」
「かもしれませんね」
「ナプ?」

駅員の言葉に苦笑して答えたヒヨリ。
わかっていないのはヤナップだけだった。
ふと時計を見れば、そろそろノボリとクダリの休憩時間がやってくる時刻だった。

「そろそろノボリさんとクダリさんのところに行かなくちゃ」

ヒヨリはヨシエと駅員にまた、と手を振ると、ノボリとクダリがいるであろう執務室へ足を運んでいく。
ヨシエと駅員も手を振り、2人を見送る。

「あのヤナップ、ヒヨリちゃんによくなついてるよなぁ・・・」
「ヒヨリちゃんのポケモンなのかな?」
「そうじゃないみたいだよ」
「「え?」」

ヨシエの言葉に駅員は固まった。

「ね、ヨシエさん、すごくいい人だったでしょ?」
「ナァップ!」

ヤナップはうん、と言うように鳴く。
先ほどのこともあってか、ヒヨリの服をがっちり掴んで離しそうにない。足を止めれば、目の前には一つの扉が。

「ここがノボリさんとクダリさんの執務室だよ」

ヤナップにそう言うと、ヒヨリはドアノブに手を伸ばした。

「こんにちわー!」
「いらっしゃい、ヒヨリ様」
「待ってたよ、ヒヨリちゃん」

ドアを開ければ、待ってましたと言わんばかりのノボリとクダリの姿が。
今日は新しい仲間と一緒のお茶会が始まろうとしていた。


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