本当に懐かしい。
そんな思いで、アルバムを捲っていく。

「ふぅ。あら?」

目に写ったのは、ライモンシティの外れにある森の中にある一つの木。

「ナップ?」

目を細めて1枚の写真を見るヒヨリに首を傾げ、
ヤナップはひょこっとヒヨリの座っている椅子に登り、
ヒヨリの膝の上に座る。

「わぁ・・・」
「ヤナァ!」

ヒヨリはヤナップの腰に手を回し、優しく抱きしめた。

「ヤナップ、これ。オレンの実の木だね」
「ナップ!」

ヤナップは嬉しそうに一声鳴き、ヒヨリは目を閉じてヤナップが出会ったときのことを思い出していた。


―――そう、あれはよく晴れた午後の出来事だった。


I love you


ヒヨリは休日を利用して、ライモンシティの外れにある森にやってきていた。
ノボリとクダリに作るクッキーに使う、木の実を探しに来たようだ。
上を見上げると、オレンの実が生っていた。

「あ、オレンの実だ」

オレンの実を取ろうとしたところで、自分の手をは違う手が重なった。

「きゃっ」
「ナプッ!?」

思わず自分の方に手を引くヒヨリ。
伸びてきた手の方を見れば、一匹のポケモンと思われる生き物がいた。
そのポケモンは頭に草のようなものが生え、大きい両耳と両目、
長いしっぽの緑がモチーフなポケモンだった。
そのポケモンはヒヨリを見て、一瞬おびえた表情を見せ、後ろを振り向いて走っていく。

「あ、待って!」

ヒヨリはポケモンの走った方を見る。
ポケモンは木の陰に隠れてしまった。
ヒヨリは口角を上げると、ポケモンが隠れた木に向かってゆっくり歩いた。
ひょっこり顔を出せば、いまだにヒヨリに怯え、警戒してるポケモンの姿だった。

「大丈夫、私は何もしないから」
「ナ・・・プ・・・」

未だに警戒心を解いてくれないポケモンに苦笑しながらも、
ヒヨリはポケモンの目の前にオレンの実を差し出した。

「これ、欲しいんでしょ?」
「ナ・・プ?」

木の実を見て、ヒヨリを見上げたポケモン。
ヒヨリは首を縦に振ると、ポケモンは嬉しそうに木の実を受け取った。

「ナップ!」

木の実にかじりつくポケモン。
よっぽどおなかがすいていたのだろうか。
ヒヨリは嬉しそうに食べる姿を膝を曲げて微笑みながら見ていた。

「ふふ。ねぇ、君はここに住んでるの?」
「ナップ!」

腕時計を見て、ヒヨリは立ち上がった。
そろそろノボリとクダリのところでお茶の時間のようだ。
ヒヨリはポケモンに笑いかけた。

「私はそろそろ行かないと」
「ヤナァ?」

首を傾げてヒヨリを見上げたポケモン。
ポケモンの口許にはオレンの実が付いていた。
ヒヨリはハンカチを取り出して、そっと口許をふいてやる。

「私はヒヨリっていうの。また会えるといいね!」
「ナップ!」

綺麗になった口許で鳴くポケモンにヒヨリは手を振り、その場を後にするのだった。


―――――――


いつものようにお茶を囲むノボリとクダリとヒヨリ。
ヒヨリは先ほどの出会ったポケモンのことをノボリ達に話していた。

「え、森でポケモンに会った?」
「はい!」
「どんなポケモンでした?」
「えっと、頭に木が生えてて、緑色で”ナップ”って言ってました」
「それ、くさざるポケモンの”ヤナップ”ですね」
「ヤナップ・・・って言うんですね」

初めて知るあのポケモンの名前。


これが私とヤナップの出会いだった―――。


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