私の目の前にいる幽霊さんは微笑んだ。
笑うとすごい美人さんだ。

「あの、お願いって?」
『ノボリとクダリに会いたいの。協力してくれる?』
「ノボリさんとクダリさんに?」


I love you


『私の名前は、ユウコ。ノボリとクダリの幼馴染で、2年ほど前にこの世を去った者』
「えっ・・・この世を去ったって・・・」

幽霊はユウコと名乗った。
しかも、2年ほど前に他界しているらしい。

『私ね、小さいころから重い病気にかかってたの。両親は仕事で家にはほとんどいないし、
入退院を繰り返していたから友達もいなかった。でも、ノボリとクダリのご両親がうちの両親と
仲が良くて、小さいころからよく面倒を見てもらってたの』

話によれば、小さいころからずっとノボリとクダリに遊んでもらっていたらしく、
病気が発覚してからも、ちょくちょく2人はユウコのお見舞いに来ていたそうな。
ヒヨリは笑顔だけども、真剣な瞳で話すユウコから目が離せなかった。
それと同時に、胸に不快感を覚えた。

あれ?
なんだか胸がちくちくする。

「そう、なんだ・・・」
『ねぇ、ヒヨリさん』
「どうして私の名前を・・・」

ヒヨリがそういうと、ユウコはヒヨリの手をそっと重ねた。

『ずっと見てたもの。あなたとノボリが出会ったあの日から・・・』
「嘘・・・」

ユウコのセリフにヒヨリは目を丸くした。
ユウコは微笑んで言った。

『嘘じゃないわ。ずっと羨ましく思って見てたわ。
私が病気じゃなかったら、今頃ヒヨリさんの位置にいるのは私だって思ってたから』
「ユウコさん・・・」
『ヒヨリさん、私のお願い聞いてくれる?』
「私にできることでよければ」

『私ね、小さいころからノボリが好きだったの』
「えっ・・・?」

ユウコのセリフにヒヨリは言葉を失った。


―――ノボリさんが、好き?


『もう、時間がないの。あの世に行く前に、せめてノボリに好きだって告白したいの』

ユウコの真剣な瞳に吸い込まれるかのように、ヒヨリは頷いた。

「・・・わかった。協力する」
『ありがとう、ヒヨリさん』
「じゃぁ、明日のこの時間に二人を連れてくるから・・・」
『うん、待ってるわ・・・』

そう約束してヒヨリは食品庫から出て行った。


―――――――


食品庫の扉を閉めると、その場に佇んだヒヨリ。
小さいころからずっとノボリに恋していた。
自分にはもう先がないとわかったとき、怖くてノボリに告白できなかったらしい。

死んでからすごく後悔したのが嫌でも伝わって来た。


―――ユウコさんはノボリさんが好き。ノボリさんももしかしたらユウコさんが・・・。


そう考えると、胸が張り裂けそうだった。

「ヒヨリ様!」
「ヒヨリちゃん!」
「ノボリさん、クダリさん!?」

なんというタイミングで出てくるのだろうか。
今のヒヨリにはノボリと顔を合わせるのが苦痛だった。
そんなことは露知らず、ノボリはヒヨリに言葉をかける。

「良かった、ご無事でしたか!」
「どうしてここに?」
「おばちゃんがヒヨリちゃんが食品庫に行ったきり帰ってこないってすごく心配してたんだ・・・!」
「いけない!サイコソーダ持ってくるように頼まれてたんだ・・・」

ユウコのこともあり、サイコソーダのことをすっかり忘れていたヒヨリ。
もう一度食品庫に戻ると、サイコソーダの箱を2ダースほど棚から取り、
それをノボリが横から軽々と持ち上げた。驚いてノボリの顔を見上げる。

「ノボリ、さん?」
「お持ちしますよ」
「す、すみません」

なんだろう・・・。ノボリさんの顔を見るのが辛い・・・。

「ヒヨリ様?」
「何でもないですよ」

ただ、わかっているのは、今にも泣き出しそうな。
そんな気持ちだった。


[Back]

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -