今日もいつものように、3人のお茶会が始まった。
ノボリとクダリは一度顔を合わせ、微笑むとヒヨリに視線を戻した。
ヒヨリはというと、自家製クッキーを口に含もうとしていた。

「ヒヨリ様、少しお話がございます」
「なんですか?」

クッキーを運んでいた手を止めて、2人へ視線を移す。
ノボリはさらに笑みを深くして、口を開いた。

「ここ、バトルサブウェイで働く気はございませんか?」
「・・・へ?」


I love you


翌日、朝から来てほしいと言われたヒヨリはノボリとクダリに連れられ、例の売店に足を運んでいた。
ここで働かないか、と聞かれて一瞬は驚いたものの、すぐに返事をした。
答えはもちろん、Yes。
ノボリとクダリに毎日クッキーを作ってお話しに来るのも楽しいが、
最近はまた新しいことを始めてみようかと思った矢先の誘い入れだった。

売店の前までくれば、ここの店の主と思われる年配の女性が立っていた。

「おや、ノボリさん、クダリさん!おはよう!!」
「おはようございます、ヨシエ様」
「おばちゃん、おはよう!」

挨拶を交わすと、ヨシエはヒヨリの方を見て、にっこりほほ笑んだ。

「その子が例の・・・」
「えぇ、ヒヨリ様です」
「いらっしゃい、ヒヨリちゃん!待ってたよ!!」
「初めまして、ヒヨリです。よろしくお願いします」

ヨシエが嬉しそうに歓迎の挨拶をすれば、ヒヨリも頭を下げて挨拶した。

「では、後のことはお任せします。ヒヨリ様、夕方終わるころにお迎えに上がります」
「そんな、お迎えに来られなくても大丈夫ですよ」

ヒヨリはノボリの申し入れを申し訳なさそうに断った。
だが、ノボリは引かなかった。

「いいえ、わたくしがそうしたいのです」

これが今のノボリの精一杯のアプローチ。
夕方とはいえ、大事なヒヨリに何があっては困る。
内心ドキドキしながらももう1度ヒヨリに言えば、ヒヨリも観念したのか苦笑した。

「・・・わかりました」
「それでは、わたくしは業務に参りますので」

ヨシエに頭を軽く下げ、ノボリは売店を背に歩き出した。
コツ、コツ、と靴の鳴り響く音がする。
ヒヨリは思わずノボリを呼び止めた。

「ノボリさん!」
「はい?」

振り向けば、目を細めて笑っているヒヨリの姿があった。

「いってらっしゃい!」
「いってきます」

ノボリは再度ヒヨリに背を向けて、執務室へと歩き出す。
その光景を見ていたヨシエは、微笑みながらヒヨリに言った。

「・・・ヒヨリちゃんはノボリさんと付き合ってるのかい?」
「え?」

”付き合ってる”
その言葉にヒヨリは顔を赤くした。
ヨシエはくすくすと笑いながら言った。

「赤くなってるよ」
「ち、違いますよ!」
「そうなのかい?」

首を横にぶんぶん振りながら否定するも、ヒヨリは一瞬だけ考えてみる。
顔を赤くしたままヒヨリは微笑むと、ヨシエに言った。

「でも・・・」
「でも?」
「ノボリさんは私の恩人なんです」

そう言ったヒヨリの顔を見て、ヨシエはヒヨリのノボリへの気持ちを察するのと同時に、
自分の気持ちに気づいていないことを悟るのだった。


―――――――


「おばちゃんとこに来た、新しい子可愛いな!」
「確か、ヒヨリちゃんって言ったっけか」

すれ違った駅員の言葉が耳に入ってくる。
ヒヨリ様のことをどうやらお話しているらしいですね。
わたくしは思わず店員の話に耳を傾けました。

「俺、ああいう子好みだわ・・・」
「俺も好きかもしれない・・・」

持っていたカップを思わず割りそうになりました。
ヒヨリ様が好き・・・ですって!?
そんな、今日ヒヨリ様をみたあなた方よりずっと前にわたくしはヒヨリ様を好きだというのに!

すごい険悪な顔をしていたのか、クダリが横でクスクス笑っています。

「ノボリ兄さん、顔怖いよ?そんなに気になるなら、見に行けばいいのに」
「クダリ!何をおっしゃるのです・・・!」

クダリの言葉に顔が熱を持っていくのが分かります。

「ノボリ兄さん。今度は顔、赤いよ」

わたくしは口がパクパクしてそれ以上は何も言えませんでした。
突如、クダリは真剣な眼差しでわたくしの顔を見ました。

「好きなら好きって早く彼女に言った方がいいよ?じゃないと、本当に誰かに取られちゃうよ?」
「彼女は・・・ヒヨリ様は未だ傷心中にございます。わたくしが好きだと申すのは如何なものかと・・・」
「ヒヨリちゃんだって、いつまでも引きずってないと思うけど?」
「・・・っ!ならば、頃合いを見計らってお伝えいたしましょう」
「がんばれ、ノボリ兄さん」

クダリはそういうと、持っていたカップに口をつけるのでした。



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