珍しく寝坊をしてしまったため、ノボリとクダリは売店で少し遅めのお昼を購入していた。
会計が終わると、店の主ヨシエが2人に苦笑しながら言った。

「ノボリさん、クダリさん。ちょいとお話が・・・」
「どうかされましたか?」
「いやね、お陰様でここんとこお店がちょっと繁盛しちまってね・・・。
私1人じゃお店をきりもりするのが難しくなっちまったんだよ。
誰か1人、店員さんを雇いたいと思ってるんだが・・・」

ヨシエの話を聞いて、ノボリとクダリは顔を合わせる。

「ノボリ兄さん、それだったら!」
「クダリも同じことを考えていましたか」

2人は首を縦に振って頷くと、視線をヨシエに戻した。

「それなら、適任が1人いらっしゃいますよ」
「本当かい?」

その言葉にヨシエの顔が明るくなる。

「えぇ、今日、その方とお会いする予定ですので、話してみましょう」
「助かるねぇ、ありがとう!ノボリさん、クダリさん!!」

売店での帰り道、クダリがポツリとノボリに言った。

「ノボリ兄さん・・・」
「どうしました、クダリ?」
「ヒヨリちゃんのこと、好きでしょ?」

その瞬間、ノボリの顔は固まり、頬は赤くなる。
クダリはその瞬間を見逃さなかった。

「あ、図星・・・」
「く、クダリ!あなたと言う人は!!」

焦るノボリを見て、クダリはちょっとからかってみようと腕時計を見ながら言った。

「あ、そろそろヒヨリちゃん来るよ!」
「!」

一層顔を赤くしたノボリにクダリは苦笑した。

「ノボリ兄さん、焦りすぎ・・・。でも、ヒヨリちゃんここで働くとなると、人気出るんじゃないかな・・・」
「!」

さっきの赤くなった顔から一変、今度は顔がだんだん青ざめていった。

「でも、すぐ近くに彼女がいるっていうのも良いね。ノボリ兄さん、少しアプローチしてみたら?」
「しかし、彼女は・・・」

ちょうど良いタイミングで事務所の扉が叩かれる音が聞こえてきた。
返事をすれば、がちゃりと扉が開いた。
そこに立っていたのは、話題の人物で。

「こんにちわ!」
「いらっしゃい、ヒヨリちゃん!」
「ヒヨリ様、いらっしゃいまし」

今日も3人のお茶の時間が始まろうとしていた。



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