柱合会議が執り行われている間、ナマエは本部の中庭の片隅に赴いていた。
彼女の肩にはいつも通り三統彦が止まっているが、他にも周りにはたくさんの鎹鴉がいる。

ナマエの元に、今日を持って鬼殺隊が解散となる旨が産屋敷家の鴉から伝えられたのは今朝方のこと。
自分の口から話したいから義勇たちにはまだ知らせず、鴉たちだけに話してほしいというのは輝利哉からの頼みだった。
鬼殺隊士を支え続けてきた鎹鴉たちも、本日付けでその役目を解かれることになるのだ。


暁に鳴く 参拾捌


「みんな、本当にお疲れ様」

ナマエはずらりと並んだ鴉たちを見回し、凛とした声で告げる。
無惨との戦いの中で儚く命を散らしてしまった鴉も多く、本来なら共にこうして集えるはずだった仲間がいないことはナマエや鴉たちに深い悲しみをもたらした。

それでもナマエは鎹鴉たちの訓練士として、彼らの前では気丈に振る舞うことを決めている。
正式に煉獄家付きとなった要を筆頭に亡くなった柱たちの鴉も勢揃いしており、この場に集まってくれた彼らの思いを推し量ればめそめそと泣いてばかりはいられなかった。
皆が、主人や仲間を喪って辛い思いをしながらもひたむきに生きているのだから。

「よしよし、いい子ね」

ナマエが我も我もと腕や肩に止まってくる鴉たちを撫でていると、砂利を踏みしめる音が近づいてくる。

「お館様!」

ゆっくりと歩いてくる産屋敷輝利哉の姿を認め、鴉たちが散り散りに舞い上がる中ナマエは片膝を地面に付き頭を垂れた。

「ナマエ、顔を上げておくれ」

まだ高い少年の声音ではあるものの、落ち着いた響きを伴って輝利哉がナマエに声をかける。

「ナマエ、それに三統彦。これまで鎹鴉たちを育て、導いてくれてありがとう。鎹鴉の皆も、鬼殺隊士と共に戦ってくれてありがとう。今日までの献身に、産屋敷一族感謝しています」

逆に輝利哉が深々と頭を下げたので、ナマエは慌てて彼に駆け寄ると跪いた。

「とんでもこざいません!私たちは皆産屋敷家の皆様に支えられてきました。鴉たちを鬼殺隊の一員として扱ってくださり、そして彼らを私に任せてくださったことには感謝してもし切れません」

それまであちこちに止まっていた鴉たちも皆ナマエと輝利哉たちの周りに集まってくる。
ナマエの肩に止まった三統彦がひと鳴きすると、呼応するように鎹鴉たちが一斉にカァとひと声鳴いた。
彼らもまた、鬼殺隊の頂点に立つ『お館様』を敬愛していたのだ。

「みんな、ありがとう」

年相応のはにかんだ笑みを浮かべる輝利哉を見守り、ナマエは三統彦と目配せして微笑む。
彼の肩にかかっていた重圧はようやく降り、長年産屋敷家に纏わりついていた呪いも遂に晴らされたのだ。

「鴉たちは好きなところに住むと良いよ。ここに住んでも良いし、他にも産屋敷家が管轄する山や林は沢山あるから」

鎹鴉たちを見回した輝利哉はそう言った後、跪いたままのナマエに立ち上がるよう促す。
そして、ちらりと後ろを横目で確認してから彼女を見上げた。

「ナマエはこれからどうするか決めている?」

見下ろした輝利哉を注視しているナマエは、彼の向こう側から近づいてくる人影に気がつくこともない。

「挑戦してみたい職がひとつ、ございます」
「それは良いね、もちろん支援するよ。けど、それだけかい?」

心地良いそよ風が輝利哉の切り揃えられた黒髪を揺らす。
まるで結論を知っているかのような視線に貫かれ、ナマエは押し黙った。
剣士として生きて行く必要が無くなった以上、有り余る時間を過ごすのに新しい職に就くことは必要だ。
しかし働くことだけが人生ではない。他に何か希望はないのかと、輝利哉の目線は暗に告げていた。

とその時、砂利が一粒転がってきてナマエの足元で止まる。
思わず顔を上げた彼女は、輝利哉の後ろまで歩み寄ってきていた人物にようやく気がつき目を丸くした。

「義勇さん!」

普段なら柱が産屋敷家当主が話しているところに音を立てて入ってくるなど有り得ないが、義勇は気まずそうに視線を泳がせながらも歩み寄る足を止めなかった。

「中で待っていてくださってよかったのに。あ、寛三郎がここにいるからですか?」
「……そういうわけではない」

いざ向かい合ったものの義勇は多くを語らず、火急の用事でもあったのかと思っていたナマエは首を傾げる。
不躾に輝利哉の前に出てくるような男ではないことは知っていたので、彼が歩み出てきたわりに口を噤んでいる理由が分からなかったのだ。

ナマエたちが膠着状態に陥っているのを見かね、輝利哉はふっと笑い声を漏らす。
二人が揃って彼の顔を見ると、弱冠八歳の当主はまるで親が子を見守るような慈しみの表情を浮かべていた。

「話を戻すよ。もしナマエがその夢を叶えるのに一人では難しいというのであれば……」

義勇は口を開きかけて、しかし言葉を発することができない。

「ナマエを生涯支えてくれそうな相手を紹介しよう。我が産屋敷家が胸を張って勧められるような、君を大事にしてくれる人をね」

まさかそんな話をされると思っていなかったナマエは驚き、向かい合った義勇は奥歯を噛み締める。
輝利哉は意味深に微笑み、苦い表情の『元』水柱を見遣った。

「勿論すぐにとは言わないから、困ったときには遠慮せず尋ねておいで」

輝利哉は莞爾として、ナマエには三統彦もいるしねと笑いかけると踵を返す。
その背中に声をかけたのは、義勇ではなくナマエの方だった。

「お館様」

足を止め振り返った輝利哉に深々と頭を下げてから、ナマエは続ける。

「ご厚意を無碍にする形になって申し訳ございませんが、私には……既に、心に決めた方がいるのです」
「そうだったんだね、ナマエ」

輝利哉は彼女の隣で目を丸くしている義勇を一瞬見てから、申し訳なさそうな、それでいて強い意志を込めた眼差しを向けてくるナマエに笑顔を向けた。
全くもって、輝利哉自身が驚いている様子は無い。

「その相手は、ナマエのことを幸せにしてくれそうかい?」
「逆なんです、お館様」
「逆?」

ナマエは首を傾げる輝利哉だけではなく隣に立つ義勇からの視線を感じ、一度深呼吸をする。

「今まで何度も大切なものを無くして辛い思いをしてきた人だから、私が彼の残りの時間を幸せなものにしてあげたいんです」
「ナマエ……」

輝利哉は齢がひと周り以上も離れた『こどもたち』の一人を嬉しそうに見上げた。
本当は彼も、何が彼女にとって一番の幸せなのかは分かっているのだ。
何故なら彼は、産屋敷家の当主なのだから。

「無惨はいなくなり、鬼に脅かされる時代は終わりました。これからは私も、新しい時代の女性らしく生きていきたいと思いまして」

明治の終わりから大正にかけて、世間には『新しい女』たちが台頭しはじめている。
職に就き、自由恋愛を楽しみ、自分の人生を謳歌する女性たちが都市部を中心に頭角を表してきたのだ。
これまで世間から隔たれた世界で生きてきたナマエも、これからは一人の普通の女として生きていかねばならない。
彼女はこの『新しい女』たちの考え方に、鬼殺隊士としての生き方しか知らない自分にとっても近しいものがあると感じていたのだった。

堂々と言い放ったナマエの横で、義勇はただ瞠目したまま動けずにいる。
この場をなんとか止めねばと勇んできたものの何と言えばいいか分からず、代わりに放たれたナマエの言葉には目を見張るばかりだった。

輝利哉はナマエの言葉をしばらくの間反芻し、やがて満足気に頷いてみせる。
言ってしまった後になって不敬に当たるのではないかと内心冷や汗をかいていたナマエは、ほっと胸を撫で下ろした。

「よく分かったよナマエ。その決断を、全面的に支援するね」

そう言った幼い当主に、ナマエも義勇も共に先代の面影を見て驚く。
穏やかな微笑みを浮かべる輝利哉の顔は、まるで彼の父と瓜二つだった。


そのまま互いにほとんど言葉を交わさず鬼殺隊本部を後にして、ナマエと義勇は連れ立って蝶屋敷への帰り道を歩く。
二人の頭上には、三統彦と寛三郎が並んで翼を広げていた。眩しく降り注ぐ太陽を鴉たちが遮り、二人の足元に影が落ちる。

「お前は、この先の道を決めたんだな」

ぽつりと、先に口を開いたのは意外にも義勇だった。
ナマエは先程はかなり大胆な発言をしてしまったと後になって恥ずかしくなったので、気まずさから会話を始められずにいた。

「……はい」

それでも珍しく彼の方から話しかけてくれたので嬉しくないわけがない。
ナマエは空を見上げ、翼をはためかせる相棒を眺めた。

「動物に関わる職に就こうと思いまして」
「なるほど。ナマエらしいな」
「はい。他には何も分からないですし」

学ぶことは多いものの、鴉たちという味方がいることはナマエにとって大いに心強かった。

「義勇さんは、何かお考えですか?」

これまで話せなかったはずの先のことも、彼から話を切り出してくれたおかげですんなりと話すことができた。
ナマエは義勇の心遣いに感謝し、そしてここで話さなければいけないと心に決める。
どんな結果になろうと、胸の内に靄がかかったままよりは良いと思ったからだ。

「俺は……まさか生きてると思わなかったから、何も考えてなかった」

左の手のひらに視線を落とし、義勇は目を細める。
彼は確かに生きたいと願ったはずなのに、短い間の猶予とはいえ実際叶ってしまうと何も考えられなくなってしまっていた。
ただがむしゃらに己を追い込み、鬼殺の道を走り続けてきたから仕方のないことだ。

「怪我も治ったばかりだし、ようやく平和になったばかりですから。深く考える時間も無かったわけですし当然ですよ」

ナマエは気落ちしたようにも見える彼を励ます。
自分はたまたま剣技以外に好きなことがあったから希望する生き方が見つかっただけで、他の隊士にも刀を置いてしまえばどう生きたら良いのか未だに悩んでいる者が多いことも知っていた。

しかし、義勇にもこの先を考えなければいけないことぐらい分かっている。
漠然とした望みはひとつだけ。ただ、それだけでは根本的なことが解決しないこともまた分かっていた。

「痣者は二十五までの命と言われている」

彼は、今はもう何も現れていない自身の頬に触れる。
結局あの痣が戦いの後浮かび上がることは今日まで無かった。

「抱えきれないほど大切なものを作ったら、残さなければならなくなる」

それに、残り少ない時間で何かを成すことができるかも分からない。
希望を抱く彼女の隣に立てば、何も出来ない自分は枷になってしまうのではないかという不安が募るのだ。
残り四年も無いであろう先を思えば、せっかく彼女の見合い話を止める気になったのにそれ以上先へ進む足はたたらを踏むばかりだった。

「さっき、私がお館様に申し上げた人が誰か分かりますか?」

ナマエが突然足を止めたので義勇も立ち止まる。
振り返れば、真剣な眼差しの彼女が義勇を見つめていた。

鴉たちは何事かと上空を旋回している。
しかし三統彦は主人の姿を見て、寛三郎を連れ近くの木の枝へと舞い降りた。

「ドウシタンジャ?疲レタノカ三統彦?最近ノ若者ハ……ヨシヨシ」
「違ェヨ爺……イヤ、ソンナ感ジダ。スゲエ疲レター、シバラクココニイヨウー」

心の籠っていない三統彦の台詞も気にせず、寛三郎はいそいそと嘴で後輩の毛繕いをはじめる。三統彦は心の中だけで、大切な主人を鼓舞していた。

「……思い違いでなければ」

義勇は遠慮がちに口を開く。
彼女が輝利哉に告げた言葉は彼にとってこの上なく嬉しい言葉だった。
しかし義勇は、その言葉を受け取ってしまって良いものか、そもそも本当に自分に向けられたもので合っているのかと思案するばかりでいる。

対するナマエは、視線を逸らす義勇をまっすぐに見据えていた。

「勿論あなたのことです。私の決意を、聞いていただきたくて」

恥ずかしかったですけどね、とはにかんだナマエに、義勇は胸に左手の拳を当て答える。

「どうしていいか分からないんだ」

それは『残されてしまった』者だからこそ知り得る辛さ、悲しさからくる戸惑いだった。

「嬉しかった。それなのに、もしお前を長い間一人にしてしまうことになったらと……」

家族に、親友に、仲間に。大切な人に残されることはとても苦しく辛かった。
その辛苦を今度は自分が愛する人に与えることになる。だからこそ義勇は迷い、本心を語れずにいた。

ふと、思考に耽っていた義勇の身体が温かくなる。
彼の背中に回されているのはナマエの腕だ。
彼の元へと飛び込んだナマエは、驚く義勇を強く抱きしめた。

「だからって、残りの人生があるのに一緒にいていただけないんですか?」

絞り出されるようなナマエの声に、義勇がはっと息を飲む。

「私は、少しだって一緒にいたいのに……」

今までは義勇が抱き締めることばかりだった。
しかし今は、一周するまでには届かずとも彼女がしっかりと両腕で彼を抱きしめている。
その力強さやぬくもり、そしてナマエの言葉は、義勇の中に渦巻いていた最後の葛藤を驚くほど簡単に解いていった。

「……俺も同じだ。本当は、お前と共に在りたい」

誰にも渡したくないと願ったのは、勿論そこに自分が立っていたいからだ。

義勇も左腕を回し、そっとナマエの背中に這わせる。
自分だけではなく彼女の方から強く抱きしめてくれることも、これから先の余生での互いの関係を思えば頼もしく、そして嬉しくて仕方がなくなった。

「ナマエ」

澄んだ水面のような穏やかな眼差しで見上げてる彼女は、いつだって本心を受け入れてくれるのだと義勇にも分かっている。

「俺はあと何年生きられるか分からない」
「義勇さん……」
「だが、この命が尽きる時まで側にいてほしい、と言ったら迷惑だろうか」

ようやく彼が口にした本音の一番底の部分は、心地良い風のようにナマエの心を揺らす。

「その日までお前を愛し続けることに、嘘偽りはない」

義勇の濃紺の瞳に、今にも泣き出しそうな顔のナマエが映り込んだ。
彼女は熱くなる目頭を押さえることもなく、義勇の胸元に顔を埋める。

「ずっと、話したくても怖くて話せませんでした」

彼にも、それが何のことかはすぐに分かる。
ようやく明日のことも分からない日々は終わったものの、今度は数年先が分からなくなってしまってまた互いに本音を言えなくなってしまっていた。
相手を思いやっていたからとは言え、こうして本心を曝け出してしまえば気持ちは同じだったというのに。

「あなたを忘れてお見合いなんかするぐらいなら、鴉たちに囲まれて森の奥に住むお婆ちゃんになった方が幸せです」

ナマエがむうっと口を尖らせていることは見えずとも、その声音から彼女の表情は推し量ることができる。
義勇はようやく、強張っていた表情を僅かに和らげた。

「それは困る。鴉に嫉妬してしまいそうだ」

真面目に言い放つ彼に、顔を上げたナマエも笑っている。

「義勇さんもそういうこと言うんですね」
「悪いか」
「いいえ?本音が聞けて嬉しいですよ」

ナマエが悪戯っぽく目配せし、二人は肩を震わせ笑い合う。
心の底から笑ったのはいつぶりだろうか。

義勇はナマエの背中に回していた左手を上げ、彼女の頭に乗せる。

「しかし驚いた」
「どのことですか?心当たりが多すぎて……」
「お館様に物申したことだ」
「恥ずかしいところをお見せしました。でも、譲れなかったんです」

はにかむナマエの髪を撫で、義勇はそこに留められている菫青石を指先で摘む。
光を浴びて淡い輝きを放つそれは、澄んだ湖のような青さを湛えていた。

「俺は……嬉しかった」

その煌めきを見つめながら、噛み締めるように義勇が呟く。

「輝利哉様のお心が広くて良かったですけどね」

ナマエがそう言って苦笑いを溢すと、彼は髪留めから手を離しナマエの肩に置いた。

「俺からも手紙を出しておこう」

その場では何を言うこともできなかったが、ナマエは自分とのことを考えてあのような強気な発言をしたのだと。
とは言え義勇も、輝利哉が腹を立てているなどとは思っていない。
ただ輝利哉から発破をかけられたのも事実なので、きちんと誠意を見せたいと考えていた。

「なら、早く左手で書けるようにならないといけませんね」

ナマエの言うことはもっともだ。
義勇はまだ左手の機能回復訓練中で、退院してからも継続的に行う必要がある。
なんとか食事は取れるようになったが、綺麗に字をかけるようになるまではまだ月日がかかるだろう。

義勇はふむ、と天を仰いでから名案を思いついたと言わんばかりに晴れやかな表情を浮かべる。

「俺の言葉をお前に綴ってもらえば良い」
「義勇さんの、言葉……?」

彼の提案に、ナマエは一抹の不安を感じ言い淀む。
対する義勇は自信満々で、自分の言葉ならきっとナマエへの思いが十分輝利哉に伝わるだろうと胸を張った。

「先生に宛てた手紙は見ただろう?」
「絶対に自分で練習して書いてください!」

そう叫ぶと義勇の胸元から飛び退いたナマエ。
忘れかけていたあの情熱的な言葉たちが蘇ってきて、彼女は今頭の天辺から爪先までのぼせたように真っ赤である。

「俺はまだ字が綺麗に書けない」
「……明日から死ぬ気で特訓しましょうね」

あっけらかんと言い放つ義勇に溜め息をひとつ。
しかしナマエは彼に歩み寄ると、彼にひらひらと揺らされる彼の右袖を掴んだ。
その言葉は本気で手紙を代筆させそうな義勇に対する牽制でもあったが、自然と明日からのことを口に出来たのはこれが初めてだった。

「そうだな。頼む」

対する彼もあれだけ先のことをどうしたら良いか悩んでいたのが嘘のように、いつの間にか心のわだかまりはすっかり解けていた。

「まずは無事に退院しないとですね」
「ああ、手伝わせてしまってすまない」
「何言ってるんですか。当然ですよ」

ナマエは義勇の赤錆色の袖を離すと右手を差し出し、その手の自分の顔を交互に見てくる彼に笑いかける。

「行きましょう、義勇さん」

義勇はその手を取ると、眉根を下げた。
こうして誰かの手を迷わず取ることが出来るのも、幼い頃以来だ。

「頼もしいな」

これまでは守る側だった義勇にとって彼女に手を引かれ導かれることは新鮮で、とても喜ばしかった。

「よろしく、ナマエ」

ナマエの手を固く握りしめ、導かれるままに歩き出した彼は空を仰ぐ。
二人の頭上に舞い戻った二羽の鴉と目が合い、義勇は感謝の気持ちを込めて微笑んだ。

 
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