The person who is sung.4




『なんと言うことだー!バーナビーです!現れたのはタイガー&バーナビーだぁぁぁあ!!』

「ふふふふ」

立て籠った犯人の他、客達も無事に避難したレストランの映像が撮される。
監視カメラの映像だと市民には説明が入ったが、勿論すべてアニエスの仕掛けたもので絶妙なアングルを捉えていた。
爆弾のスイッチを見せびらかし、より切羽詰まった感を醸し出す安い催涙スプレーをがたがたと振り回す自爆テロリスト、もとい迫真の演技の役者。
固唾を飲んで市民が見守る中、とうとう現れたタイガー&バーナビーに彼女はおかしそうに笑った。

「ふふふっ、たいしたシナリオね」

薄暗い部屋を照らすモニターは3つ。
ひとつは現在放送中のHEROTV。
そしてもうひとつは、見ることはできないはずのHEROTV内部の監視カメラだった。

『し、視聴率45%突破しましたー!』
『まだまだいくわよ!カメラ切り替えて!ブルーローズ!聞こえる?』
『聞こえているわ』
『スタンバイよろしく』
『OK』

部屋に中継の音声が流れ、片耳を外したヘッドフォンからHEROTVの内部の会話が流れ続けている。
アニエスたちは、自らが見られていることなど知りはしない。

彼女はそのままもうひとつのモニターに目を向けた。
そこには新しく入ったメールがひとつ。
時間通りね、と彼女は小さく呟きヘッドフォンを外す。
首にかけていたイヤホンをするとおもむろに立ち上がった。
手にしているスマートフォンに繋ぐと、最後にもうひとつデスクに置かれていたお揃いのスマートフォンを手に彼女は部屋を出た。






∠main