The person who is sung.2




『あーもうお前そんなんじゃいつまで経っても乾かねぇよ』

イヤホンから聞こえた声は最近行動を共にしてくれている男だった。

『おら、ドライヤー貸せって』
『なんで』
『なんでじゃねぇよ!俺らも風呂入んの!早くして!』

位置はこのシュテルンビルトで有名なヒーローの家で、聞こえるのはそのバディの男のものだ。
どうやらやたら世話を焼く男は見ていられないらしい。

『虎徹さん?次僕入りますって言いましたよね?呼びにいくってどれだけかかっ……何してるんですか』
『何って、乾かしてる?』
『っん!あっつい』
『あ、ワリ。平気か?もうすぐに終わるかんなーちょっと我慢なー』

はぁ、と聞こえた溜め息。
早くしてくださいと一言二言言って冷めた声はしなくなった。
相変わらずモーターと風が当たる音が僅かにするのを彼女はPCを操作して雑音をカットした。
するとだいぶクリアになった音声に二人の声が乗る。

『お前さぁ、これからどうすんの?』
『どうもしない』
『追われてる、んだろ?それ、……なぁ何でなんだよ』
『疲れた』

いや意味わかんねぇし、と小さく聞こえたそれに、PCの前で彼女は人知れず笑い声を上げた。
それからは他愛ない話が一方的に続き、それを聞き流しながらモニターへ別のページを立ち上げたのだった。







∠main