Song of the murder. 4




「死因は……内臓破裂と伴う腹部裂傷で失血死、だそうです」
「……そうか」
「自然には、あり得ません。しかし凶器らしき爆発物の破片も成分も現場にはなかったそうです」
「……そうか」

「…。犯人特定も難しいようで」
「……そうか」

廊下を進みながらバーナビーは隣を歩く虎徹にそう言った。
対して虎徹はといえば酷く空の上の方にいるようだ。
それを横目で見ながらバーナビーはいつか虎徹に見せてもらった家族写真を思い出す。
保護した女性は、日本人だ。

「綺麗な黒髪でしたね、彼女」
「……そうか」
「…おじさん。聞いてませんよね」
「……そうか」

はああ、と聞こえるほど強く溜め息を吐いたバーナビーはぴたりと足を止める。
しかしそれでも気づかれず。
バーナビーは一度額に手を当てるが、早足で虎徹に追い付き、ぐん、と肩を掴んで強制的に目線を合わせた。

「虎徹さん。……虎徹さん!」
「………ん、おお。なんだ?どしたバニーちゃん?」
「それはこちらの台詞です!そんな彼女が…!っ……あー、いえ。いいです、すみません」

思わず口を突いて出そうになった言葉を飲み込んだ。
これに関しては流石に踏み込むべきではないだろう。
そう思って踏み留まったのだがしかし、そこまで言えば無駄な時に鋭いこの男は勿論こちらの言いたいことがわかったのだろう。
バーナビー以上に眉を寄せると肩に置かれたままの手を軽い調子で振り払い声だけで笑った。
ヒラヒラと手を振って前を向き歩き出すが、反対の手ではハンチングを目深に被り直して。

「なーに。っはは!違う違うバニーちゃん大丈夫だよ。………あいつとは、似ても似つかない、し」

小さく付け足されたそれには気づかない振りをした。
まったく、全然違ってないじゃないでしょうが。
こちらこそ気付かれないようにバーナビーは小さく溜め息を吐いた。



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