Song of the murder. 3




「おいあんた!平気か?!何があったんだ!」
「虎徹さん静かに!!」

バーナビーがそう言うと先に飛び込んだ虎徹は、はっとして息を潜めた。
彼で見えなかった倒れている女性の状況を見るとバーナビーも駆け寄る。
どうやら日系人らしい長い黒髪に白い肌の女性は白いワンピースを着せられていた。
着せられていた、というのはまるで入院着のようなものだったからだ。
彼女のその手足と首には枷が填められ、そしてそれは逃げられないように鎖で大きなソファの足へと繋がれている。
これは誘拐か、否、拉致…なのか。
バーナビーもその姿に、僅かに目を見開いたがすぐ辺りの確認に入る。
だが、いくら注意深く見渡しても生体反応は彼女以外にはない。

室内は応接セットに書棚と窓辺に観葉植物が置かれた、見た目だけなら至って普通の応接室だった。
鎖で繋がれている彼女だけが、これが異質な空間だと告げていた。
何かが、起きた。
バーナビーはマスクの下で眉を寄せた。
そう考えると、少しだけ開いた扉の向こうがしんと静まり返っているのはやけに不自然だった。
そう、気味が悪いほどに。

ゆっくり一歩踏み出し、もう一歩。
すると、少しだけ開いていた、その扉の、向こうには。

「っ、!」
「……バニー?」

彼女以外には生体反応はない、だから誰かいたとしても。
俯せに転がるこの男が、既に事切れているくらい部屋に入った時から、わかってはいた。
死因は、出血性のものだろうか。
夥しい量の血が男の体を包んでいる。
改めてマスクを上げれば、部屋には酷く血の臭いが充満していた。

「っ」
「とにかく、…外へ出ましょう」
「……ん、ああ」

ごくり、と隣から唾を飲み込む音が響く。
いつの間にか彼女を抱き上げた虎徹がそこに立っていた。
青白く光る彼は能力を発動させ鎖を引きちぎったらしい。

マスクを戻し再びジャンプして、二人は向かいのビルに着地する。
意識のない彼女の首枷を慎重にバーナビーが外すと、僅かに彼女が呻いた。

「………ん、…」

睫毛を揺らし、ゆっくりと目を開ける。

「あっ!良かった大丈夫か?!」
「もう大丈夫ですよ。安心してください」

目を覚ましたことに二人はほっと息を吐き安堵すると、彼女に話しかけた。

「…だ、れ?」

少し視線をさ迷わせた彼女が二人に向かい言う。


すぐ近くにはHEROTVのヘリが飛ぶがそれは終始火事を追い、三人の出会いを知りはしなかった。



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