Song of the murder. 27




「っと時間ですね。もう行かないと」
「うわ、マジか。もう。じゃあまた明日な、エア」
「なんで?」

そう彼女が返したのを、はじめ二人は特に気にしなかった。
彼女が疑問を口にするのは珍しくないからだ。
何かされること、してもらうこと。
そういうものは彼女にとって普通ではなかったのだろう。
それは、ヒーローになったばかりの頃のバーナビーの様で、小さな子供の様で。
虎徹は扉へ向かうバーナビーの後を追う為に立ち上がる。
眉を下げ申し訳なさそうにエアの頭をさらりと撫でてた。

「いや、もう行かねぇと。ごめんな」
「うん。だからなんで、あした?」
「え?」
「もう来なくていいよ。来なくて平気」




「だいじょうぶ。いなくて。一緒じゃなくて」



リビングの扉に手をかけていたのはバーナビー。
先導するその彼の後ろから虎徹は、二人は、室内のエアへ目を向けていた。
エアはいつも通りに何も分かっていないような顔で、何も感情の読み取れない顔をしていた。

「…なぁ、エア」
「なに?」
「…虎徹さん。間に合わなくなります」
「わぁってるよ!……エア!明日も来るから。絶対に来るからな。…っみんな、連れてくるから」
「なんで。いらないのに」

小さく傾げた姿。
虎徹は振り返った背後からの、バーナビーの舌打ちを聞いた。
駆け寄って頭を撫でてやりたい。
どうしてこんなにも、愛に人に、慣れてない奴が多いんだろう。
そんな手のひらを握り込みながら虎徹は部屋をあとにした。


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