Song of the murder. 24




「嘘、だろ……」
「ちょっと、アンタどういうコト?」
「……おい、バーナビー。さっきの話と違うぞ。お前と虎徹のとこにいたんじゃねぇのか」
「………」
「ねぇ、タイガー。この子偉いところの子なの?」

降り立ったのはシュテルンビルト、最高級マンションのエントランス。
エアの隣には虎徹とバーナビー、そして他にネイサン、カリーナ、アントニオだ。
有名な三ツ星ホテルをマンション大手の企業が改修している為に入居者専用のジムやプールを始めとするハイグレートな設備、事前連絡すれば食事まで運ぶホテル張りの対応と最近TVをつければ見ない日はないというほど広告が流れているマンションだった。
見上げる面々を他所にエアはすたすたと中に入っていってしまう。
虎徹も驚いたが、バーナビーも驚いていた。
何故。
この数日、今までは何だったのか。

ホテルのままの入り口は二重の自動扉。
そこ抜けたインフォメーションカウンターには当たり前に2人のスタッフが立ち、広いエントランスに警備員は6人。
インフォメーションカウンターの前を通らなければエレベーターには辿り着けず、監視カメラに死角は無さそうだった。
防犯対策に申し分はない。
一歩を踏み出すその動きにさえ然り気無い視線を感じる。
バーナビーはそれを確認しながらエレベーターに直進するエアのあとに続く。
キョロキョロと見回す虎徹と、カリーナも物珍しいのだろうがそれを虎徹のように態度には出さず静かに着いてくる。
あらん、いい男。
警備員を見て小さくネイサンが呟く。

「なぁエア」
「なに」
「いつからここに住んでんだ?」
「住んでない」
「は?」
「綺麗なところだね。すごく」

エレベーターの前にエアが立った瞬間に扉が開いた。
乗り込めばボタンを押す前に、勝手に最上階のパネルが点灯する。

「あ、いちばん上なんだ」
「…は?」

何?ホントにアンタたち知らないの?、背後からネイサンに肘でつつかれバーナビーは眉を寄せたまま視線だけ返した。
まったく訳がわからない。
ただただ彼女を拾った事情が事情なだけにまだこの奇っ怪な状況に誰も対応していなかった。
どこかの世間ずれした令嬢か何かか。
かい摘まんだ話しか聞いていないアントニオはそう考えもしたがしかし、バーナビーと虎徹は数日彼女と過ごした所為でそのようになんて、到底思えない。
話を聞いていないカリーナは尚更だ。

考えているうちに最上階へ着き、フロアに出る。
がしかし、そこにあるのは廊下ではなくフロアの向かい側に扉がひとつ。
3001。
書かれた部屋番号は勿論、このマンションで一番大きな数字だった。


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