Song of the murder. 23




「エア!!」
「とらだ」
「も、ばかやろっ!何で急にいなくなったりしたんだよっ!」
「…いたい」

その後エアとカリーナのふたりが話しているところへ一目散に駆け寄ってきた虎徹は、思い切りエアを抱き締めた。
カリーナは目を見開いて固まったが、その後の虎徹の子供扱いに呆れたように溜め息を吐いた。
少しだけ、羨ましそうに。
グリグリがしがしと頭を撫でる虎徹にエアの方といえば珍しく煩わしそうにしていたが。






「あら、見つかったのね。それで?この子、どこにいたの?」
「…ソファに挟まってたわよ」
「やあ、諸君。彼女の事情は聞いた!そして聞いた」
「……なんだそりゃ。かくれんぼか。よく見つけたなブルーローズ」
「かくれんぼ!ボク得意だよ!」

三人が会場に戻ると来賓はみんな帰ったあとで既に会場の片付けが始まっておりヒーローは端に集まっていた。
ネイサンとバーナビーが残りの面々に彼女を拾った事情を話している最中だった。
エアを見てほっとしたようにみんなが笑顔になる。

「それで?何で出ていったんですか」
「え、あ。エア、そういやお前何で勝手に出てったんだ?」
「……」
「はぁ。……聞いてられないくらい『下手くそ』だったんですって」
「は?」
「…頭、いたかった」

虎徹の隣、窓の外を見つめたままエアが呟く。
カリーナでさえわからない程度の話を理解できるわけもなく。
ことの経緯をカリーナが話すとやはり誰もが首を傾げた。
しかし会場の片付けも終わり追い出されるかたちで廊下に出ると、ふと思い出したように各自時間を確認。

「っともうこんな時間だ。パトロールに向かわなくては!ではエアくん!みんな、おやすみ!そして、よい夢を!」
「ああ行ってらっしゃいスカイハイ。ご苦労さま」
「ボクも帰らないとダメだけど帰って平気?」
「ええそうね、それじゃ続きはまた明日にでもしましょ」
「おう。んじゃ俺らも帰るとすっかバニー、エア」

キースとホァン、それに付いてイワンも帰っていった。
残ったのは古株大人組と脱力気味のカリーナだ。
虎徹が繋ぎっぱなしだった手を握り直すとエアがそれから逃れるように手首を返そうとする。
どした?
小さく問うとエアが虎徹を見上げてきた。

「……帰る」
「おう。もう帰るぞ?」
「ちがう。もうだいじょうぶ。あたし、あたしのおうちに帰る」
「は?帰るったって、おま…あ?どこにだ」
「虎徹さんまで何言ってるんですか。…あなた、家ないんでしょう」
「できたの。だからもうだいじょうぶ」
「何それ。二人は知らないの?ちょっとアンタ出来たって、何処によ」

「ちかく」



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