Song of the murder. 22




「どうして、死んじゃだめなの?」








「……ねぇ。あなた、エア?」

エントランスの端にあったソファの隙間に座り込むエアに気が付いたのはカリーナだった。
声をかけ、緩く頭を上げたエアは小さく、あー、と言った。

「見つかっちゃった」
「は?」
「んーん。それじゃあ、またね」

会っていきなり何の話かと思えば、髪で埋もれ見えなかったがどうやら電話をしていたらしく。
立てた膝の上で操られたスマートフォンにカリーナは首を傾げた。

「何であいつら直接連絡しないのよ」
「?」
「…もういいわ。さっさと行きましょ」
「どこ」
「タイガーたちのとこに決まってるでしょ?探してたのよ」
「なんで、探すの」
「なんでって、心配してるから!」
「なんで心配したの」
「あーもう!あなたがいきなりいなくなったから心配して探していたの!」

埒が明かないとカリーナは膝を抱えるエアの腕を掴むと立ち上がらせるように引く。
エアの着ているワンピースドレスは綺麗なままで清掃の行き届いたジャスティスタワーではそんな隙間でも埃ひとつ落ちていなかった。

「ちょっと。それ、履かないの?」
「履くの?」
「履いて。」

そう言われるとエアは大人しくソファへと座り直しパチン、パチン、とストラップを付ける。
何なのこの態度。
エアの頭を見下ろしながら額に手を当てカリーナは溜め息を吐いた。

「ねぇ。何でいきなりいなくなったりしたのよ」
「ねぇ、さっき最後にあっちのタワーで歌ってたね」
「え、私?えぇ、まぁ」
「きもちわるかった」
「はぁ?!」
「ここの上でうたっていた、ひと。音、少し変だったから。きもちわるかった」
「あ、あぁそう…だったかしら?…」
「そうだったの。へたくそだったね」
「…そう、かしら」
「そう。きいて、いられなかったね」
「……ん?え、だから出たの?」
「そう」

ゆっくりとエアが立ち上がる。
カリーナはエアを見ていたが逆にカリーナこそエアに顔をじっと見つめられ、そのままキスでもしそうな距離まで近づかれた。
思わず一歩後退るがエアに気にした様子はなく。

「ちょっ、」
「あなたは、けっこう、すき」
「え?…えぇ、あ、あありがと?」



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