Song of the murder. 19




「クソッ…!!」

どこ行った?何でいない?
何で、いないんだ。
きょろきょろと忙しなく辺りを見回しながら小さく溢される。
その背中に追い付いたヒーロー達はその虎徹の慌てっぷりに顔を見合わせた。

「ちょっと、あんた慌てすぎよ。そんなんじゃ見つかるもんも見つからなくなるわ」
「っだいたいなぁ、お前がっ!!」
「虎徹さん、誰の所為でもないですよ」

みんなの後ろからバーナビーが小走りに近づきながら声を上げる。
虎徹は思わず掴み掛かっていた手に気付くと、わり、と呟いた。
ぱっとネイサンのスーツ襟首を離す。
こんなところで揉めている場合でもないのだ。

「ねぇ、ちょっと待ってよ!アンタ達が保護してるって一体何があったの?また偉いとこからの依頼?」
「んもう。それはあとでにしてちょうだいって言ったじゃない。とにかく探してあげて」

「いえ、…そうです。どうして彼女、斎藤さんのところに戻らなかったんですか?」

カリーナをネイサンが制す。
走り出そうとした虎徹は冷静なバーナビーの声にまた立ち止まり振り返った。
カリーナは少し不服そうだったが、その問いに答えている余裕はなかった。
パーティーの最中、虎徹自身もおかしいと思っていたのだ。
自身がオーナーを務める為スポンサーの相手や諸々、ネイサンにとっても虎徹達同様このパーティーは大切なもののはずだ。
これを機会に新しくスポンサーを獲得できるかもしれない。
その邪魔をするわけにはいかないし、だからこそ虎徹達は身内の斎藤がいない間だけ預けようと思っていたのだ。

「それが…ちゃんとアンタんとこのメカニックにも会わせたわよ?でも、言うこときいてくれなかったのよ。動いてくれなくて」
「え?」
「いえ、それもちょっと語弊があるかしら?何て言うか、聞こえていない?っていうか」
「……ぼんやりしてた、か?」
「ええ、そう」

そんな感じ、そう言うネイサンの言葉に虎徹の顔がみるみる険しくなっていく。

「何なんですか?」
「ほらバニー、あいつおかしかったってさっきも言ったじゃねぇか!なんか、……ほら!店でも」
「だから…何なんですか?!」
「座ってたじゃねぇか!真ん中で!」

いまいち事態が飲み込めない、そういう顔を虎徹以外の全員がした。
どういうこと?
勿論みんなは彼女を確認すらしていないわけで当たり前なのだが、バーナビーでさえそんな顔をしたので虎徹のただでさえ険しかった顔がとんでもなく歪んでいく。

「…それが何だって言うんですか」
「何って!だから!」
「もうタイガー、ハンサム!とりあえず探しましょ!」

堂々巡りになった会話の収束のをしようと二人の間にネイサンが話って入る。





「珍しい、…ですよね。タイガーさんがあんなに慌てるの…」
「まぁそうだな。いつも騒いじゃいるが」
「タイガーにとったらみんな大事よ。でも仕方ないかしら。事情が事情なのよ。それに…相手が相手ですもの」

とにっかく強敵なのよ、と言ったネイサンの言葉の意味はエアを知らない面々には分からなかった。



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