Song of the murder. 18




パーティーは盛況のうちに終わり、市長が締めの挨拶をしている時。
虎徹は隣にいたバーナビーが小さく溜め息を吐くのを感じた。
極々控えめなそれは周りの誰も気が付いていないだろう。
分かったのは丸々一年のブランクがあるとはいえ、そこは流石にバディだからだった。
こいつも流石に疲れたか。
虎徹が密やかに笑った矢先だ。
ちょいちょいと畏まった深い色目のスーツの裾が引かれ、振り返り視線を下げるとそこに斎藤が立っていた。
一番後ろ側にいたはずの彼に若干驚くが体を寄せる。

『い な い』
「は?………はぁっ?!ちょっ、」

思わず虎徹は大声を上げていた。
丁度同じ頃、ネイサンも彼女の姿がないことに気がついたのだった。



「パーティー会場で迷子?誰なのよ、それ」
「タイガーとバーナビーから預かってたのよ。名前はエア」
「は?なんであいつらが」
「もう、保 護 !してたのよ。取り敢えず事情はあとにして」
「ねぇその子ってもしかしてさっきまでファイヤーエンブレムの側に立ってた女の子のこと?」
「あらええ、そうよ」
「じゃあボク分かるよ!」
「その子はどんな子なんだい?」
「んーカワイイ子よ。……破格に愛想ないケド」
「白かった!」
「そうか!色白の美人さんなんだね!」
「色も白いけどドレスの話よ。長い黒髪の日本人」

さっさと会場を飛び出ていった今夜の主役、ワイルドタイガーを尻目に来賓の相手をしつつ辺りを確認したのはもう一人の主役バーナビーだ。
ネイサンも誰かを探すような、しかし焦った様子にヒーローたちがそれとなく集まった。
何事かと話を聞くとみんなはそれぞれ反応を示す。
迷子よ、と言ったネイサンの向こう側でバーナビーは退場していく来賓相手に話を続けている。

「まったく、嫌になっちゃうわぁ」
「ファイヤーエンブレム?」
「何でもないわ。取り敢えず、みんなも探してちょうだい」

彼女がいつからいないのか、と言われればネイサンもA′が歌い始めてから姿を確認していない。
もう30分は経ったかしら。
血相変えて飛び出していってしまったままの今日の主役の背を思いながらネイサンも他のヒーロー達と廊下へ向かう。
踏み出す瞬間、もう一度バーナビーを見れば、ばちりと強い視線に出合った。



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