Song of the murder. 12




「で?風呂上がりのまんまでお前放置したのかよ!?」
「仕方ないじゃないですか。何度言っても聞いてくれなかったんですよ」

ちゃんと髪も乾かしてあったし、バーナビーは窓辺に座り込んだままの彼女へ毛布も持っていった。
それはおとなしく受け取り頭から被るともふもふと包まる。
彼女は満足したようにありがとう、と小さくそう言った。
そしてまた膝を抱えて同じ姿勢に戻ったのだった。
お礼に対し、いいえ、と返したがしかしバーナビーも女性を床の上に置いて自分はベッドで寝るなど許せるわけはなく、そのまま結局3日連続、ある程度リクライニングされているとはいえ座ったまま朝を迎えたわけで。

「流石に今朝は僕だってベッドが恋しくもなりました」
「あーまぁ、確かに3日経ったしな。エアも遠慮してんのか…」

上司の部屋から帰り際、バーナビーが昨晩のことを話す。
若干虎徹がとらと呼ばれていた反面、彼女に普通に名を呼ばれバーナビー自身は目を瞬かせていたりもしたが。
何故昨晩かと言えばそれまでの3日間にバーナビーは彼女と会話らしい会話をしたことはなく、コミュニケーションはすべて虎徹任せだったからだ。



「取り敢えず、今夜彼女どうします?」
「……そうだな…」

タイガー&バーナビーが一部リーグへ復帰する。
シュテルンビルトでここ最近まことしやかに流れていた噂は今夜のHEROTVの生放送で現実になる。
その後は過去の活躍やらのダイジェスト番組が流れ、当の本人達はパーティーに出席することになっていた。

「それに、これからだって。今までのように早く戻れる訳じゃなくなりますよ」

大半が追い掛けっこだった軽犯罪相手の活動とは訳が違ってくる。
ハンドレットパワーの二人からすればそれこそ、スピード負けはしないわけで。
たとえ移動手段を持たれたとしてもバーナビーが作戦を組み立て先回りして追い詰めた。
そうしてまたバディを組んで出動してからは、一度として取り逃がしたことはなかった。
ほんの小一時間やそこらで蹴りがついて、現在二部リーグではダントツだ。
だからこそ今回、一部復帰にとの話の流れなっていた。



「…じゃ今あいつを放り出せって?」



低く落とされた、声。
前触れなくピタリと虎徹が立ち止まる。
ぐ、と眉を寄せそのままバーナビーを睨み付けた。
その酷く真剣な様子にバーナビーも合わせて立ち止まるとゆっくりとその目を見つめ返す。

「別にそうは言ってません」
「は。同じことだろ。……事件が起きたらトランスポーターに乗せりゃいい」

連れ歩くことを望む。
もしもの時に目が届かないところにいられるよりはずっといいというのだろう。
虎徹の言うことも間違いではないし、もしここでいかにも生活力の無さそうな彼女を放り出して別の事件でも起きたらそれこそ目も当てられない。
ヒーローがいるという程度には、シュテルンビルトは安全ではないのだ。
ある程度は虎徹の言うことを通してやってもいいとバーナビーもそう思っているが、彼は少し疑問を感じ始めていた。
果たしてあの逃走した者たちは彼女をまた捕らえに来るのか、否か。
用心するに越したことはないと言われればそれまでだが。
しかしでは何故拉致していた彼女を『置いて』逃げたのか、仲間を殺す必要があったのか。

「バニー?」
「ああいえ。…ですから取り敢えず、今夜のパーティーの間はどうするんです?斎藤さんも出席しますよ」
「は?…いやそれは、えっと、なあ?」
「はぁ」



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