clap



拍手ありがとうございます。








The person who is sung.6

滑り込むように一つ下の階へ。
幸い、彼らはフロントで食事を頼んでくれた所為で十分に降りる時間は取れた。
この手のマンションでは住民同士が顔を合わさないようにエレベーターさえも管理されているが。
誰がか乗っていると使用中のランプが点る。
ホールで二人が乗っているエレベーターが最上階を示すのを見届けた。

いい傾向、だと思う。
こうなるのも予測して行動させた。
それなのに心が晴れないのは、私があの子を独占していたいからだ。

「下らない感情ね」

自分がこんなことを思うなんて。
否、ずっとその思いだけで生きてきた。

真上の階と同時に購入した室内は、電気を着けていない真っ暗の中にいくつものテレビモニターがぼんやりと光っていた。

「ねぇ、仕上げはもうすぐよ。それで」

死ねるわ。
コートも脱がないままで、モニターを指先でなぞる。
誰にも届かないこの声は、スピーカーから届く笑顔と笑い声にやはり消されてしまった。





∠top