一章-見たもの-


「取り敢えず、座れ」

立ったままの俺に向かいの青年は言った。
黒の着物で肩に白い布を巻いている。
コイツも昨日...いた奴?

「どうした、早く座れ」
「あっ、はい...すみません」

断りを入れて、空いている所に腰を下ろす。
俺を案内してくれた奴も
隣に座った。

「単刀直入に聞く。お前は昨晩、何を見た」

いきなり思いも寄らない質問をされた。
聞かれているのは、あの出来事。
それは分かる。
だが、"何を見た"と言うことはどういう事なのか...。
今の時代、人を斬る事は珍しくないし、民衆にも新選組が人斬り集団と呼ばれているくらいだ。
今さら人を斬った所を見られたくらいで、問題にはならないはず。
だから俺は質問の意味が分からなかった。

「俺、何も見てないです」
「嘘だな。見たんだろ、うちの隊士が浪士等を斬り倒しているところを」

部屋の奥から、若干赤みがかった髪の人が問い詰める。

見てはいない...





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