「あーあ、残念だなぁ...斎藤君、こんな時に限って仕事が速いよね」
「俺は務めを果たすべく動いたまでだ」
2つの羽織。
その二人の足元には白髪の死体。
一瞬にして斬り殺された人間...いや違う。
さっき女の子を追いかけていた男達とは全く。
「いいか、逃げるなよ。背を向ければ斬る」
その場の空気を一層引き締める様な低音が響く。
その声の主を目で追う。
雪の降る夜に満月のはずなのにー。
その黒髪は美しく風に靡き
まるで狂い咲きの桜のような...
カチャ...
―…!?
刀を鞘に納める音で我に帰る。
思わず暫くの間、見とれてしまっていた事に気付く。
「で、君は何をしてるの?」
カシャ...
首に鋭い光が突き立てられる。
(かっ、刀!?)
恐る恐る顔を上げると、
俺に刃を突き立てた青年の顔には、笑みが浮かんでいた。
「よし、こいつは屯所に連れて行く」
「総司、どうかしたか」
(はっ!そうだ女の子は...)
「女の子は無事なのか...!」
声を上げる俺を隣の青年が制す。
『余計な事を言うと殺すよ?』
そう小声で俺を睨み、質問に答える。
「この子、さっきからそこの角に隠れてたんだけど...どうします?」
「...そいつも連れてこい」
少し悩んで声にしたようだった。
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