鳥籠の中


「今日はここまでです」
「有り難う御座いました」

開いていた参考書とノートを閉じて、ため息まじりに顔を上げる。
目の前には、白い文字で埋め尽くされた黒板と見慣れた大人の顔がある。
さっきまでレオハルト家誕生の話を聞かされていたせいか、いつもに増して体がダルい。

「ルシエル様、今日のお話は国王になられた際、必ず必要となります。ですから定期的に復習しておいて下さいね」

本日何度目かと思うくらい聞き馴染んだ言葉。
国王になられた際...か。
国王になる、つまりそれは父が死んで、僕がレオハルト家の頭主の座を継ぐという事だ。

「分かってますよ」

すっかり作り慣れた口調も、性格も、笑顔も、全てレオハルト家の為だ。
本心は国を納めるために頑張ろうなんて、素直に思えるほど完璧じゃない。

席を立ち部屋を出て、自室に戻る長い廊下を進む。

「はぁ...」

そもそも、レオハルト=ルシエル・ネヴァ、と自分の名前に王家の名前が入ってる時点で、同い歳の民からは軽蔑されるし、学校なんてものには近付けてさえもらえない。

だだっ広い王宮で先生と1対1で勉強して、本を読んだりゲームをしたりして1日を終える...その繰り返しだ。
つまらないと思うのは当然だろう。
本当は外に出て学校に行って、友達ってものと一緒に遊びたい。
でもそんなの不可能だって事は分かってる。
物心付いた時から、レオハルト家の時期頭主の位置付けだったんだ。
嫌でも諦めが付くさ。

足元に敷かれる長くて赤い絨毯、頭の上には規則的に吊り上げられた豪華なシャンデリア、横に目を向ければ絢爛豪華な調度品ばかりが飾ってある。
実につまらない。



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