教室の中央





水道の泡を全て流し終え、
私たちは教室の中にいた。

2人以外誰もいない、沢山の机だけが置いてある教室の
中央にある1つの机を選んで座った。

「ったく、びしょ濡れじゃん。誰だよ水浴びして遊び出した奴は」

お前だよ
と少年に言いたくなったが
先程まで全力で水遊びをしていた私に、そんな気力は残っていなかった。

教室は静まり返る。

彼から借りたタオルで
黙って髪を拭く私を
目の前の少年は黙視していた。

「………なに?」

私は黙っていた口を開く。
黙って見つめられたら、居心地が悪い。

「………髪、俺が拭いてやろうか?」

何を言い出すんだ。
子供じゃあるまいし、
髪くらい自分で拭ける。

「………いいよ」

私は断ったつもりだった。

「そっか」

そう言った少年は静かに私の手からタオルを奪い、優しい手付きで私の髪を撫でた。

「な、なにするの...!」

私の髪を拭く少年の手を掴んで止め、
立ったままの彼を下から睨んだ。

「何って...あんたの髪を拭いてやってるんだけど?」

どうやら彼は勘違いしたらしい。
私のさっきの断り方が悪かったのを
今更気付いた。

自分に非があるのを悟ってしまえば、何も言えなくなるのは決まっている。

「………なんだよ」

黙り込んだ私を見かねた彼は、私の髪の上に乗せていたタオルを強引に引き離して奪い、
教室の扉の前まで走った。

「もうお前にタオルは貸さねぇからなっ」

そう言い残して教室を出た彼を呆然と見送って、
また気付く。

まだ髪の毛を完全に拭き終えていない。
このままでは風邪を引いてしまうし、髪も痛んでしまう。

私は勢いよく立ち上がり、教室を出ていった少年の後を追った。




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