Phantoms of the past - 021

3. ダイアゴン横丁の大乱闘



 秘密の部屋について話をした日以降、リーマスは以前にも増して私に闇の魔法と戦う術を教え始めた。勉強は前から教えて貰っていたけれど、それ以上に徹底的に、だ。ただ魔法を実際に使う練習は出来なかったので、リーマスは「ホグワーツに戻ったら必ず練習するように」と何度も念を押し、練習する呪文のリストまで作っていた。

 8月13日の満月の日は、先月と同様、ウィーズリー家にお泊まりさせて貰った。ハリーはダーズリー家にいた時よりはるかに元気になっていて、隠れ穴での生活を満喫しているようだった。けれどもハリーは私がどうやって隠れ穴と自宅を行き来しているのか、未だによく分かっていないようだった。今度会った時に煙突飛行のことを教えてあげようと思う。

 隠れ穴ではハリーはもちろんのこと、ジニーにとても歓迎された。ジニーがとても可愛くて「恥ずかしくてハリーと話すことが出来ないの……」と夜2人きりになった時に話してくれた。このことを誰かに相談することが出来なかったらしい。

 ジニー曰く、パーシーは部屋に篭っているし、フレッドとジョージとロンは論外だし、両親に相談するのも恥ずかしいとのことだった。そういう訳で彼女はずっと、相談するなら私しかいない、と考えていたようだった。「ハナが本当にあたしのお姉さんだったら良かったのに」と言われた時は嬉しさのあまり思わず叫びそうになってしまった。

 ランニングと座禅も相変わらず続けている。ランニングは始めた当初より体力がついたからか、以前より疲れにくくなったようで、少し距離を伸ばすことにした。座禅もはっきりとした効果は分からないけれど、以前よりも集中力は増したように思うので、どちらも学校が始まってからも続けようと思う。

 友達との手紙のやりとりも定期的にしている。マンディとリサとパドマも夏休みに何をして過ごしたかをやりとりしたし、セドリックとも何通かやりとりをしていて、ウィーズリー家に泊まりに行ったという話もした。セドリックからは他にもホグワーツ特急で同じコンパートメントを取ろうと誘われたりもしたので、もちろん快くOKの返事を出した。

 ダンブルドア先生にも秘密の部屋について手紙を書いた。ただ手紙には「今年度ホグワーツでとても恐ろしいことが起こるかもしれない」としか書かなかった。リーマスと相談を重ねた結果、ルシウス・マルフォイとドラコ・マルフォイのことは書かないことにした。父親はまだしも、息子のドラコについては、彼がまだ12歳の子どもだという点を考慮してあげるべきだと結論づけたのだ。

 マルフォイ父子の件については特に証拠がないのも直接名前を書かなかった理由の1つだ。ただ、生徒の中に悪事を働く人物がいるかもしれないことは手紙に書き添えておいた。

 「気を付けておこう」というダンブルドア先生からの返事は、満月の日の前日にホグワーツからの手紙と共に届いた。けれど、問題はダンブルドア先生の返事ではなかった。

「ギルデロイ・ロックハートって誰なの?」
 
 手紙を見るなり、しかめっ面で私はリーマスに訊ねた。ホグワーツから届いた新学期用の新しい教科書リストに載っている8冊の教科書のうち、基本呪文集以外の7冊がギルデロイ・ロックハートの本だったのだ。

「確か今ご婦人方に人気の魔法使いさ。格好良いと評判で、ファンが多いそうだよ」
「リーマスは彼の本を読んだことはある?」
「いや、私もないんだ」

 きっとD.A.D.Aの新しい先生が指定した教科書だと予測出来たけれど、例えギルデロイ・ロックハートの本が素晴らしかったとしても7冊なんて多過ぎるのではないかと思った。新しい先生はギルデロイ・ロックハートのファンなのだろうか。もし本人だったらとんだナルシストだ。あまりお近付きにはなりたくない気がする。けれども新しい先生がどうあれ、

「今回の先生がヴォルデモートを引っ付けてなくて、且つ、にんにく臭くなければ嬉しいわ」

 何より無害な先生であることを祈るばかりである。