Phantoms of the past - 019
2. ハリー救出大作戦
ダーズリー家から隠れ穴までは行きと同じく2時間ほどの道のりだった。私達は案内をしてくれたロキに別れを告げ、鍵を掛けられて閉じ込められていたヘドウィグを外に出してやると、ようやくハリーの身に起こったことを聞くことが出来た。
なんとハリーが公式警告状を受け取ったのは、ドビーという名前の
そのドビーが言うにはなんでも、今年度、ホグワーツに罠が仕掛けられ、世にも恐ろしいことが起こるそうなのだ。なのでハリーはホグワーツに戻ってはいけないと、彼は警告に現れたらしい。けれどドビーは一体誰が罠を仕掛けるのかや、ドビーの仕えている家がどこなのかは話してくれなかったらしい。訊ねると「ドビーは悪い子!」と言って自分を痛めつけ始めたからだ。
更にドビーは友達に忘れられていると思えばハリーがホグワーツに戻る気がなくなるかもしれない、と私達が送った手紙を全部取り上げていたそうだ。手紙を受け取っていないハリーが私達に返事を出せないのは当たり前だ。それにヘドウィグは閉じ込められていたので、自ら手紙を書くことも叶わなかったのだ。けれどきっと、手紙を書けたとしてもドビーに取り上げられてしまっていただろう。
しかし、そんなドビーの奮闘も説得も虚しく、ハリーはホグワーツに行かないことに納得しなかった。なので、ドビーは最終手段だと、ダーズリー家で魔法を使ったのだ。ダーズリー家で魔法が使用されれば、魔法省が魔法を使ったのはハリーに違いないと勘違いすることをドビーは知っていたのだ。公式警告状が出れば退学になる、ということも。
ハリーが監禁されていたのは、そのドビーの一連の行動が原因だったらしい。その日に行われていた商談を滅茶苦茶にされ、しかも公式警告状を見てハリーが夏休み中魔法を使ってはいけないことを黙っていたと知り、怒り狂って閉じ込めたのだそうだ。
「そりゃ、くさいな」
「まったく、怪しいな」
話を聞いたフレッドとジョージは、ドビーがハリーを
しかも私達にはハリーを貶めようとする人物に心当たりがあった。ドラコ・マルフォイである。彼はこの1年間、何かとハリーに突っ掛かっていたので、目障りに思っていても頷けるだろう。
フレッドとジョージが言うには、マルフォイはルシウス・マルフォイの息子なんじゃないかということだった。なんでも、ウィーズリーおじさんが話しているのを聞いたことがあるらしい。
ルシウス・マルフォイはヴォルデモートの大信奉者だったらしいが、ヴォルデモートが消えると本心じゃなかったと言って戻って来た人物なのだそうだ。けれどもウィーズリーおじさんはヴォルデモートの腹心の部下だったと思っているらしい。
「ハナはドビーのこと、どう思う?」
ドビーが実はマルフォイ家に仕えていて、ハリーを騙しているのでは、と心配になったのだろう。ひと通り話を聞いたあと、ハリーが不安そうに私に訊ねた。
「うーん、真実は分からないけれど、何か悪いことが起きようとしているのは事実だと思っておいた方がいいかもしれないわ」
私は慎重に言葉を選びながら言った。
「どうして?」
「だって、その方が万が一の時に備えられるでしょう。もし何も起こらなくても、平和に過ごせてラッキーと思えばいいのだし」
とはいえ、今年度も何かしらあることは間違いないのだ。だとすると、ドビーは本当にハリーを思って警告に来てくれた可能性が高い。主人の悪行を知り、黙って警告に来たからこそ自分を罰していたのだと思う。ただ、何が起こるのか全く分からないということが難点だった。『秘密の部屋』だと言うことは知ってるんだけど、それが何かを私は知らないのだ。必要の部屋のような隠し部屋なのだろうか。リーマスならその部屋について何か知っているだろうか。1度聞いてみた方がいいかもしれない。
それからパーシーのことや、ウィーズリーおじさんの仕事の話をしていると、私達は夜明けと共にようやく隠れ穴に帰って来ることが出来た。何事もなく無事に辿り着けたことに誰しもがホッとしていて、あとはこっそり部屋に行くだけだ、と話し合う。
「ハナは家に戻って、俺達はお袋が朝食ですよって呼ぶまで待つ。それから、ロン、お前が下に跳びはねながら下りていって言うんだ。“ママ、夜の間に誰が来たと思う!” そうすりゃハリーを見てお袋は大喜びで、俺達が車を飛ばしたなんてだーれも知らなくてすむ」
しかし、私達はまだ知らない。カンカンになったウィーズリーおばさんが私達を待ち受けていることに――。