The symbol of courage - 050

9. 本当の友達



 一夜明け学年末のパーティーの日がやってきた。
 私は2日前に目覚めたこともあってか、この日はマダム・ポンフリーも「5分間だけ」という条件付きでお見舞いに来てくれた人に会うことを許してくれた。そこで私はようやく同室の子達と再会することが出来たのだけれど、彼女達は私の顔を見るなり大号泣だった。

「ハナが――襲われたって聞いて!」
「切り裂かれて、傷だらけだって――」
「私達、ずっと、生きた心地がしなかった」

 目を真っ赤にさせてそう話してくれた彼女達に私は安心させるようにニッコリ笑って自分の腕を見せながら「ほら、傷ひとつないわ。私は大丈夫よ」と答えた。それでも彼女達はクィレルが私に対していつも様子がおかしかったから、もっと気をつけるべきだったとか、試験のあとも私と一緒にいるべきだったと、言いながら何度も謝った。

「マンディ、リサ、パドマ、謝らないで」

 私は彼女達を遮って言った。

「こんなに私に心を砕いてくれてありがとう」

 彼女達はそんな私にまだ何か言いたいことがありそうだったけれど、「もう5分経ちました!」と言うマダム・ポンフリーに連れ出されてしまい、それ以上は話せなかった。彼女は昨日ロンとハーマイオニーが来た時に、5分だけという約束を守らず15分以上も話し込んだことを根に持っているのかもしれない。

 でも、同室の子達も大人しく帰るだけではなかった。医務室を出る間際に、

「ハナ! 私達、貴方が大好きなんだから!」
「心配するのは当たり前でしょ!」
「分かったら早く退院してよ!」

 と3人が口々に言うのが聞こえて、私は胸が熱くなった。

「君の友達って素敵だね」

 衝立の向こう――外されたのはロンとハーマイオニーが来た時だけだった――からハリーがそう話しかけてきて、私は「ええ、とっても大好きなの」と笑顔で答えた。


 *


 この日のマダム・ポンフリーはなんと、2組目のお見舞いも「5分間だけ」という条件で医務室の中に通してくれた。次にお見舞いに来たのはセドリックで、彼が医務室に来たのは同室の子達が訪れてから数時間後のことだった。

「ハナ、君が無事で良かった……!」

 マダム・ポンフリーに衝立の中に通されたセドリックは、私の顔を見るなりそう言って、こちらに駆け寄って来たかと思うと、何故か中途半端に両手を上げた状態で一瞬固まって、それから、ベッドの脇の椅子に大人しく座った。何だかそれが、昨日ハリーに抱きつくのを我慢したハーマイオニーの行動に似ている気がした。

「ダンブルドア先生から君が傷だらけだったって聞いて――その、ポッターを庇ったって」
「大丈夫よ。マダム・ポンフリーが手当てをしてくれて、傷はもうすっかり治ったの。セドリックも無事で本当に良かった」

 それからセドリックは気を失って、目覚めたあとの話して聞かせてくれた。あれから気を失ったセドリックをクィレルが医務室まで運んだらしく、セドリックは明け方近くに医務室で目覚めたらしい。医務室にはマダム・ポンフリーの他にもダンブルドアやマクゴナガル先生、フリットウィック先生やスプラウト先生がいて、彼は慌てて昼間に起こった出来事を訴えたそうだ。

「そしたら、君が傷だらけで寝ていると仰ったんだ。翌日の夜には夕食の席でダンブルドア先生が何が起こったのか教えてくれたんだけど、君が2日も目覚めなくて、僕は気が狂いそうだった……」

 苦しげにそう言って、セドリックはもう一度「君が無事で本当に良かった」と言った。そして、彼はこちらに手を伸ばしたかと思うと――

「もう10分も経ちました!」

 と、マダム・ポンフリーに怒られて、連れ出されしまった。私が慌てて「また夜に!」と言うと、セドリックは苦笑いしながら手を振って医務室をあとにした。