The symbol of courage - 036

7. クィレルとスネイプ



 ダンブルドアには直接会って話すのはなかなか難しいので、ハリーが不安がっていることや、次は反対呪文を唱えられる人がいないので危険かもしれない、と手紙を書いてロキに持たせることにした。確か『賢者の石』では、スネイプ先生が審判をした試合にダンブルドアが訪れた記述があったので、手紙なんかなくともきっと来てくれるだろうが、念のためだ。

 ダンブルドアに手紙を書くこと以外に私がホグワーツに戻って来てからしたことといえば、ハグリッドに頼んで森の近くでお花を摘ませて貰ったことだ。お花は遅くなってしまったけれど、ハロウィーンの時に気を遣って席を外してくれたマートルにプレゼントだ。しかし、花を見たマートルは「あんたバカなの?」と呆れたように言うだけだった。

 因みにトロールに壊されたトイレはまた元通りに戻っていたのだけれど、元通りというのは私が初めてここに来た時に見た状態と同じ、ということだ。マートルはこの状態が生徒達もあまり来なくて居心地がいいのかもしれない。

「ゴーストにお花だなんて。あんたが初めてよ」

 マートルはそう言いつつ、「そこの洗面台の上にでも置いておいて。違うわ、そこじゃ見えないじゃない。こっちから見えるように置くのよ。バカね」と花の置き場所についてあれこれ注文をつけていたので、実は満更でもないのかもしれない。

「嬉しそうに見えるわよ、マートル」

 クスクス笑いながら、一緒に持ってきていた花瓶に水を入れようと蛇口を捻ると、なんと壊れていて水が出なかった。するとマートルが「その蛇口からは水が出ないわよ。私が生徒だった時からずーっと壊れてるの」と話した。

「何故修理しないのかしら?」
「さあ。私に聞かないでよ」

 私は首を捻りながらマートルに訊ねたが、マートルも理由は知らないようだった。蛇口が壊れていては不便だと杖を取り出すと「レパロ」と唱える。しかし、

「出ないわ……」

 何故か水は出なかった。呪文が失敗したのかもしれないと割れた鏡に向けて「レパロ」と唱えると、鏡はきちんと綺麗な状態に戻っていた。

「変ね。それに何故この蛇口にだけ蛇の模様があるのかしら」

 何かの悪戯だろうか。私は蛇口をまじまじと見つめながらただただ首を捻っていた。


 *


 ダンブルドアに手紙を書いたり、マートルにお礼に行ったり、セドリックと図書室で勉強したり、空き教室で魔法の練習をしたり、必要の部屋で無言呪文を練習したりしているうちに、あっという間にグリフィンドールとハッフルパフの試合の日がやってきた。

 前日には「いいところを見せられるといいんだけど」と言うセドリックに「頑張ってね」と労いの言葉を掛けたが、彼は私がハリーばかり応援するのではないかと少し疑っている様子だった。

 当日は少しでも応援している気持ちが伝わればと、ハーフアップにした髪をセドリックからバレッタで留め、試合を観に行ったのだけれど、なんと試合は5分で終わってしまった。あっという間の出来事だった。

 ハリーも試合前はスネイプ先生が審判で不安そうにしていたのに、ダンブルドアが無事に観に来てくれたことが影響したのか、彼は瞬く間にスニッチを掴み、試合を終わらせたのだ。結果はもちろん、グリフィンドールの勝利だ。ハリーが勝って嬉しい気持ちも当然あったけれど、「情けないよ」と落ち込んでいる様子のセドリックを見ると手放しで喜べない自分がいた。

「君に勝ったところを見せたかったんだけど」

 試合後に会ったセドリックは、そう言って悲しそうに笑っていた。