The symbol of courage - 035

7. クィレルとスネイプ



 クリスマスの日の朝はリビングに山のようなプレゼントが届いた。ハリーとロンはそれぞれお菓子をくれたし、ハーマイオニーは書くと色が変わるインクをくれた。同室の子達からはお菓子やアクセサリーが届き、ダンブルドアは変身術の本で、私は動物もどきアニメーガスのことがバレているのではないかと一瞬冷や汗をかいた。

 フレッドとジョージからは悪戯グッズの詰め合わせが届いた。どれもこれも使い方が分からないものばかりで、リーマスにあれこれ教えてもらったのだけれど、彼はとても懐かしそうにしていた。

 セドリックからはとても綺麗な髪飾りを貰った。私の杖に似た装飾がされた楕円形のバレッタで、私の瞳の色のヘーゼルに似た色の石があしらわれていて、彼のセンスの良さがうかがえた。クリスマスカードには「君に似合うと思って」と書き添えられていた。

 新年も明けるといよいよクリスマス休暇も終わりに近付いてきた。私はリーマスとの楽しかった日々が終わってしまうと思うと悲しくて仕方なかったが、リーマスは「復活祭イースターは宿題で忙しいだろうから、次は夏休みを一緒に過ごそう」と優しく宥めてくれた。

「ハナ、ホグワーツに戻っても危ないことは控えるように。腹が立っても男の子は吹き飛ばしてはいけないよ。それから、トロールとも戦ってはいけない」

 クリスマス休暇が終わる1日前――いよいよホグワーツに戻る日が来ると、リーマスは何度も私にそう言い聞かせた。この4ヶ月間に私の身の回りで起こった出来事を聞かされたリーマスは、とうとう「こいつは思ったよりじゃじゃ馬だぞ」と認めざるを得なくなったらしい。ジェームズなら「いいぞ! ハナ! スリザリン全員吹き飛ばせ!」くらいは言いそうだけれど、9と4分の3番線のプラットホームでまるで父親のように私を心配する彼に私は思わず笑ってしまった。

「ハナ、私は本気で心配しているんだ。君にもしものことがあったら――」
「リーマス、私、ちゃんと戻ってくるわ。絶対よ」

 表情を引き締めて力強くそう言うと、リーマスは少し安心したようだったが、それでもまだ疑っているようだった。彼はどうやら私が自らトラブルに飛び込んでいくのではないかと思っているらしい。うーん、間違ってはいないかもしれない。ハリーのためなら例え火の中水の中、だもの。

「リーマス、出来るだけ心配掛けないようにするわ。それから手紙もたくさん書く」
「ああ、楽しみにしているよ」

 最後にぎゅっとハグをして、私達は別れた。コンパートメントの窓を開けて、リーマスが見えなくなるまで手を振り続ける私に、彼は笑って手を振り返し続けてくれた。

 マルフォイを吹き飛ばしたことも、トロールと戦ったことも、ハリーのクィディッチの初試合も――私はリーマスに何でも話したけれど、動物もどきアニメーガスの件以外に私が彼に話していないことがもう1つあった。それは、賢者の石の件だ。

 きっと、学年末は彼を心底心配させてしまうだろう。姿が見えなくなった彼に私は、「ごめんね」と呟いた。


 *


 新学期が始まった。
 クリスマス休暇明けの1週間ほどは、友達と互いにプレゼントのお礼を言い合ったり、休暇中どう過ごしていたかの報告会があちらこちらで開かれていた。私もその中の1人で同室の子や、セドリック、フレッドとジョージ、ハリー達にプレゼントのお礼を言ったり、何をしていたかの話をした。

 ハリーは、プレゼントの巾着袋をとても気に入ったようだった。「これならダーズリー一家も気付かないよ!」と嬉しそうに話してくれたので、これにして良かったと改めて思った。

 そして、ハリーはクリスマス休暇中に見つけた不思議な鏡の話も聞かせてくれた。夜中にこっそり抜け出したときに見つかりそうになり、逃げ込んだ部屋に置かれてあったそうで「みぞの鏡」と言うらしい。ダンブルドアが言うには、それには自分の望んでいる姿が見えるのだそうだ。私には何が見えるのか少し気になったけれど、同時に怖くもあったので、一緒に見に行くことにならなくて少しホッとした。

 クリスマス休暇が明けたあとも相変わらずハリー達はニコラス・フラメルについて探していたが、ハリーに限ってはクィディッチの練習もあったので、毎日とても大変そうに見えた。あまりにも大変そうなので、とうとう、

「ダンブルドアを調べたらニコラス・フラメルが誰なのか分かるかもしれないわね。だって、ハグリッドはダンブルドアとニコラス・フラメルに関係していると話していたんでしょう?」

 と話してしまった。こんなに頑張っているんだもの。少しくらいヒントをあげたってダンブルドアは怒ったりしないわ、と私は無理矢理そう納得することにした。

 一方私はと言うと、無言呪文の練習を開始した。けれどもこれがとても難しくて、なかなか上手くいかず、何週間も成果が出ないままだった。やっぱり1年生で無言呪文を成功させようだなんて無謀だったのか、と落ち込む日々が続いた。これでは杖なしで呪文を使うなんて夢のまた夢だ。

「ハナ! フラメルを見つけた! ハナの言った通りだったよ! ダンブルドアに謎を解く鍵があったんだ!」

 ハリー達が興奮気味に私の元にやって来たのは、グリフィンドールとハッフルパフの試合が迫っていた時だった。ハリーは嬉しそうに蛙チョコのおまけのダンブルドアのカードを見せてくれたが、同時に次の試合の審判がスネイプ先生になったと言うバッドニュースも告げた。

「ハリー、大丈夫よ。私がダンブルドア先生に試合を見に来てくださらないか話してみるわ」

 ハリー達はクィレルではなくスネイプ先生を疑っていたことを思い出して、私は言った。スネイプ先生には気を付けなくてもいいだろうけれど、審判をするなら反対呪文を唱えている暇はないだろうから、クィレルが何もしないようにダンブルドア先生がその場にいた方が安心だろう。

「ありがとう、ハナ」
「大丈夫よ。スネイプ先生は貴方に何もしないわ。審判しながら呪いを掛けてたらみんなにバレるもの」

 フレッドとジョージがいつもするように、ウインクしながらそう言うとハリーは少し安心したように笑った。