The symbol of courage - 030

6. クィディッチとクリスマスプレゼント



 大混乱の中終わった試合は、終了後も大混乱だった。フリントは20分以上も「あいつは取ったんじゃない。飲み込んだんだ」と喚いていたし、実況のリーはその間ずっと試合結果を叫び続けていた。観客席も興奮して大はしゃぎの生徒や、城へ帰ろうとする生徒達でごった返していた。

「それで、さっきは大丈夫だった?」

 セドリックは私が呪いを掛けている人物の元へ向かったことを心底心配しているようだった。城に帰る最中、私にそう訊ねてきたセドリックに、私は「私がどうにかする前に呪いを掛けていた人物が周りの観客に薙ぎ倒されてしまったの」と話した。

 そんな私達の周りでも、ハリーの箒がおかしかった件について「あれは呪いだったんじゃないか?」「そんなバカな」と議論をしている声が聞こえた。セドリックは頭が良いので、私が言わなくても周りの生徒達のように呪いに気付いたに違いない。しかし、セドリックも周りの生徒達も誰が呪いを掛けていたのかはさっぱり気付いていなかった。

「心配してくれて、ありがとう。セドリック」

 私がそういうと、セドリックは「次は僕も一緒に行くよ」と言ってくれたが、私は曖昧に笑って応えた。だって、こんなにいい人を巻き込んでしまったら、私は私のことを一生恨むだろう。


 *


 クィディッチの試合からしばらくは、ハリー達がスネイプ先生を疑ったり、ハグリッドがうっかり口を滑らせて話してしまったニコラス・フラメルについて調べ出したりする以外は穏やかな日々が続いた。

 ハリー達が話してくれたのだけれど、試合後にハグリッドの元へ訪れた3人は、三頭犬――フラッフィーという名前らしい――がハグリッドの犬だったと言うことも聞いたらしい。それで、あんな凶暴な犬まで持ち出して守っているものにニコラス・フラメルが関わっているというので、彼らは躍起になって探しているのだ。

 3人には「ハナもニコラス・フラメルのことが何か分かったら教えてほしい」と言われたが、私は彼らに教えるつもりは一切なかった。私は答えを知っているけれど、きっとダンブルドアは私がその秘密を簡単に明かすことを望んでいないだろうと思ったのだ。それに何事も自分達で調べて答えを見つけることに意味があるというものだ。

 そうは言っても頑張って探している姿を見るとつい答えを教えたくなってしまうので、私はなるべく彼らには近付かないようにしていた。近付かない間何をしていたのかというと、やっぱり勉強だった。勉強は比較的順調で、この分だとクリスマス休暇後には無言呪文の練習に入れるかもしれない。

 クィレルの方だけれど、相変わらず私のことをチラチラ気にしている素振りはあったが、接触してくることはなかった。今やホグワーツの生徒は誰でも私の後見人がダンブルドアだと知っていたので、生徒達がいる前で私に何かすることは出来ないのだろうと思った。けれど、警戒するに越したことはないので、私はD.A.D.Aの授業だけはギリギリに行って、真っ先に教室を出るという作戦を貫いていた。

「可哀想に。家に帰ってくるなと言われて、クリスマスなのにホグワーツに居残る子がいるんだね」

 いよいよクリスマス休暇が近付いてくると、マルフォイがそう言ってハリーを嘲っているのを時々見掛けたけれど、彼は私が睨み付けると途端に口を噤んだ。ロンはそのことについて「また君に吹き飛ばされると思ってるのかもしれない」とおかしそうに話していた。

 なんと、12月の上旬にはダンブルドアと2回目のお茶会をするもあった。話の中心はクリスマス休暇をどう過ごすのかだったのだが、可能なら家の手入れにメアリルボーンの自宅に戻りたいと話した私に、ダンブルドアは2つ返事で許可をくれた。ヴォルデモートのことがあるのでまさか許可が貰えるとは思わず、何度も頭を下げてお礼を言う私に、

「わしからの少し早めのクリスマスプレゼントじゃ」

 とダンブルドアはニコニコ笑った。