The symbol of courage - 029

6. クィディッチとクリスマスプレゼント



「さあ飛び出しました――ジョンソン選手――ブラッジャーがものすごいスピードで襲うのをかわします――ゴールは目の前だ――頑張れ、今だ、アンジェリーナ――キーパーのブレッチリーが飛びつく――が、ミスした――グリフィンドール先取点!」

 フレッドとジョージの悪戯仲間であるグリフィンドールのリー・ジョーダンの実況――監視役であるマクゴナガル先生のツッコミ付き――がクィディッチ競技場に響き渡った。「グリフィンドール先取点!」の声を聞くと客席のほとんどから歓声が沸き起こり、私とセドリックももちろん大喜びでハイタッチした。

 セドリックとクィディッチを見にきたことは正解だった。彼は選手でもあるので、あまり競技に詳しくない私に丁寧に説明してくれたし、双眼鏡を貸してくれた。更には誰かが技を見せると、「あれはこういう名前の技で」と教えてくれたりもした。しかも見やすい席を確保してくれたので、本当に彼には頭が上がらない。お世話になりっぱなしだ。

 城から競技場に至るまでに感じていた視線は、試合が始まると全く気にならなくなって、私は初めて見るクィディッチに夢中になっていた。クィディッチはブラッジャーが怖いのと、時折悪質な反則をする選手がいること以外はとても素晴らしいスポーツだった。スポーツ観戦にあまり興味のなかった私でも、クィディッチならとても楽しめそうだった。

 ハリーは選手達の遥か上空で、スニッチが現れるのを待っていた。そのことを不思議に思っていると、きっとブラッジャーなどに攻撃されないようにする作戦なのだろうとセドリックが教えてくれた。そして、

「ハナ、スニッチだ」

 スリザリンのチェイサー、エイドリアン・ピュシーの左耳を金色の閃光が走るより早く、セドリックが私の肩を叩いて上空を指差した。すると、実況のリーや客席にいる生徒達も、早くもスニッチが現れたことに気付いたようで、観客席が途端にザワザワとし出した。

 スニッチに気付いたハリーも矢のように飛んで追いかけ始めたけれど、あともう少しというところで、スリザリンチームのキャプテンであるマーカス・フリントがハリーの邪魔をした。それがとても悪質で、危うくハリーは箒から落ちそうになり、私は怒りのあまり大声で叫んだ。

「That's pretty low!」

 「最低!」という意味合いの言葉なのだけれど、私があまりにも怒っているので、セドリックが「ポッターは大丈夫だよ、ほら」と私を宥めなくてはならなかった。

 フリントはフーチ先生から厳重注意を与えられて、グリフィンドールはフリー・シュートをすることとなった。けれど、そのゴタゴタが行われている間にスニッチはどこかへ消えてしまい、スニッチがどこへ行ったのか誰にも分からなくなった。

 スニッチが消えてしまったことで、フリー・シュート後は試合が再開されることとなった。けれど、次第にハリーの様子がおかしくなってきていることに気付いて、私はサッと観客席を見た。どこかにクィレルがいるはずだ。

「ハナ?」

 そんな私の様子に気付いたのは、隣にいるセドリックだった。怪訝そうに声を掛けてくる彼に私は、尚もクィレルの姿を探しながら言った。

「ハリーの箒の様子がおかしいの。きっと、誰か強力な呪いを掛けてるんだわ」

 その間にもハリーはますます箒に振り落とされそうになっていた。私の記憶が確かなら、ここはハーマイオニーが気付いて動いてくれる筈だけれど、今にも落ちそうになっているハリーを見ているだけだなんて出来るわけがなかった。

「いたわ! セドリック、ここで待っていて」

 クィレルの姿を見つけると私は一目散に駆け出した。観客を掻き分け、クィレルのいるスタンドの1つ後ろの列を疾走していた。そして、クィレルの背後に回り込み、杖を取り出した所で、

 ドン!

 と誰かがクィレルを薙ぎ倒した。ハーマイオニーだった。彼女は私の存在に気付くことなく、スネイプ先生の後ろに上手く回り込むと、なんと、スネイプのローブに火をつけた。

 周囲がローブが燃えていることに気付くと、ハーマイオニーは隙を見てサッと炎を回収することを忘れなかった。なんという手際の良さだろう。それに、ハーマイオニーは火をつける相手を間違えたけれど、見事呪いの妨害には成功した。なんたって、クィレルを薙ぎ倒したのだから。

「ハナ、ポッターが取った!」

 ホッと一安心してセドリックの元へ戻ると、試合はもう終わっていた。ハリーはなんと、スニッチを口でキャッチして試合を終わらせたのだ。

「グリフィンドール、170対60で勝ちました!」

 リーの興奮気味な声が競技場に何度も繰り返し響き、ピッチの中ではハリーが嬉しそうな顔でスニッチを掲げていた。