The symbol of courage - 021
4. キッチンと必要の部屋
「「ダンブルドアが後見人!?」」
フレッドとジョージは目をまん丸にして驚くと、廊下全体に響くような大声で言った。「おい、大スクープだぞ」と話している2人を私は苦笑いしながら見た。あのアルバス・ダンブルドアが後見人だと分かったらそれは驚くよね。私だって2人の立場なら飛び上がるほど驚いただろう。あ、もしかしたら、こういう時に使うのかも。マーリンの髭!
「まあ、そういう訳でお茶をしたのよ」
「すっげぇこと聞いちまったぜ」
「でも、僕達に話して良かったのか?」
「大丈夫よ。先生方はみんな知っているってダンブルドア先生が仰っていもの。ねぇ、それより、私早く厨房に入ってみたいわ!」
すっかり話が逸れてしまったと、私が話を戻すとフレッドとジョージはもう少し話を続けたそうな顔をした。彼らは通い慣れた目の前の厨房よりも、後見人がダンブルドアという話題の方が重要なようだった。
「レディの仰せなら仕方ない。さあ、レディ。くすぐるのはこの梨です」
恭しくそう言って、梨の方に掌を向けるフレッドにクスクス笑いながら、「ありがとう、紳士様」と言うとフレッドは私のその返事が気に入ったようだった。ニヤリと笑ってウインクしてくれた。私は彼らほどウインクが上手なホグワーツ生をまだ見たことがない。
人差し指を伸ばして大きな緑色の梨をくすぐると、梨はクスクス笑いながら身を捩って、急に大きな緑色のドアの取っ手に変わった。ドキドキしながらその取っ手を握りフレッドとジョージを見ると、「どうぞ、レディ」と今度はジョージが恭しくそう言った。
そっとドアを開けて中に足を踏み入れると、そこは天井の高い巨大な部屋だった。上の階にある大広間と同じくらい広く、石壁の前にずらりと、ピカピカの真鍮の鍋やフライパンが山積みになっている。部屋の奥には大きなレンガの暖炉がある。
「わあ、素敵」
厨房には、大広間にある4つの長テーブルとほぼ同じ位置だと思われる場所に同じように4つの長テーブルが置かれていた。そのテーブルの上にはつい先程まで
「お嬢様! お坊ちゃま方!」
私達が厨房に入ると、忙しなく働いていた
「忙しいのにお邪魔してごめんなさい。この間はとっても美味しいアフターヌーンティーを用意してくれてありがとう。それから毎日美味しいお料理も。私、一度お礼を言いたかったのよ」
声を掛けてくれた1人にそう話をすると、彼――または彼女――は感激したように大きな瞳を潤ませた。すると周りにいた
「そうだ。バスケットか何かに軽食を詰めて貰うことは出来るかしら?」
先程大広間で1人ポツンと食事をしていたハーマイオニーの姿を思い出して、私は言った。一緒に外でランチが出来たら、彼女の気も紛れるのではないかと思ったのだ。彼女はもう既に昼食を食べているから、フルーツや軽めのデザートを少し多めに詰めて貰うことにする。
「それ、どうするんだ?」
フレッドが不思議そうにしながら訊いた。
「可愛い女の子をデートに誘うのよ」
「マーリンの髭! 驚いた。君より可愛い女の子がホグワーツいるだって?」
「あら、ジョージ。貴方がそんなにお上手なんて知らなかった」
クスクス笑いながら言うと、フレッドが「俺としてはアンジェリーナだな」と真面目な顔でそう言った。アンジェリーナといえば確かグリフィンドールのクィディッチチームいて、とっても美人な人だと本に書いてあったような気がする。クィディッチの試合の時、実況をしていた子が「魅力的だ!」とか言っていたような記憶がある。あの実況は面白かったので、記憶に残っている。
「まあ、確かにアンジェリーナは魅力的だな。あとは、ハナと同じレイブンクローのチョウ・チャン。新入生だとパチル姉妹もなかなか」
「ホグワーツ生ではないけど、貴方達の妹さんもとーっても可愛かったわ。ほら、ジネブラだったかしら」
「ジニーは将来化けるぞ。間違いない」
美人談議に花を咲かせていると、
「フレッドとジョージも連れてきてくれてありがとう! とっても素敵なところだったわ!」
「「お安い御用さ」」
私達は来た道を戻り、階段を登って再び玄関ホールへと戻った。すると、昼食を食べ終わったらしいハーマイオニーがちょうど大広間から出てくるのを見つけ、私は急いでフレッドとジョージに「また今度!」と言うと、慌ててハーマイオニーを追いかけた。
「ハーマイオニー!」
私が声をかけると、ハーマイオニーは驚いたような顔でこちらを振り返った。が、声を掛けたのが私だと分かると「ハナ!」と嬉しそうに微笑んだ。
「こんにちは、ハーマイオニー。貴方を食後のデートにお誘いしたいのだけど、どう?」
フレッドとジョージがよくやるような、少し畏まった風にそう言ってバスケットを持っている手とは違う方の手を差し出せば、ハーマイオニーは面白そうに笑いながら頷いた。そして、
「ええ、喜んで」
と私の手を握ったのだった。