The symbol of courage - 012

2. ホグワーツ特急と組分け儀式



 ヒキガエル探しをしているネビルに会ったり、それに付き添っていた優しいハーマイオニー――とっても可愛い!――に会ったり、マルフォイ達をうっかり「回転せよフリペンド!」で吹き飛ばしたりと色々あったホグワーツ特急は、無事に暗くて小さなホグズミード駅に到着した。

 ハリーとロンと共に汽車を降りると、ハグリッドが誰もが緊張した面持ちの私達1年生を出迎えた。生ハグリッドはとても大きくて、プラットホームがホグワーツ生で埋め尽くされてもどこにいるのかすぐに分かった。ハリーを見つけると「ハリー、元気か?」と嬉しそうに笑っていた。ハグリッドってとっても優しい人だと思う。

 上級生達は馬車でホグワーツまで向かうらしいのだけれど、私達1年生はハグリッドの引率で険しくて狭い小道を歩いて行かなければなからなかった。1年生に遠回りさせるのは、きっと新入生を迎え入れる準備がいるからだろうと思う。けど、木々が鬱蒼と生い茂る道を歩くのは今日限りにしたいと切実に思った。

 けれど、険しくて狭い小道を抜けた先にある、大きな黒い湖の畔から見たホグワーツ城は圧巻の一言だった。向こう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が建っている。大小さまざまな塔が立ち並び、キラキラと輝く窓が星空に浮かび上がっていた。

「うわぁ……」

 この時ばかりは緊張なんて忘れて、ただただ感動していた。けれども、「夜のホグワーツは初めて」とうっかり口から出そうになって、私は慌てて両手で口を抑えることになった。

 湖の岸辺にはボートが繋がれていた。私達はそれに4人ずつ――私はハリーとロンとは違うボートだった――に乗り込んで、ホグワーツへと向かった。ボートが進むにつれて、まるで頭上に迫ってくるようなホグワーツ城は大迫力で、私は地下の船着場に到着するまで上を見上げたままだった。

 いよいよホグワーツ城に到着し、ハグリッドが樫の木の大きな扉をノックするとエメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。彼女の名前は映画で見たことがあるから私にも分かる。グリフィンドールの寮監の――名前はそう、マクゴナガル先生だ。

 『賢者の石』ではダンブルドアは呼び捨てなのに、マクゴナガル先生は敬称付きで書いてあったけど、なんでだろう? お陰で私も同じようにしちゃうから、うっかりダンブルドアを呼び捨てにしないように気をつけなくちゃ。

 私がそんなことを考えている間にハグリッドからマクゴナガル先生へ引率者が交代した。私達は広い玄関ホールを横切り、ホールの脇にある小部屋に一旦押し込まれた。これから一体何があるのだろうと周りの子達は不安そうにキョロキョロとしていて、ハリーもロンも不安そうだった。

「ホグワーツ入学おめでとう」

 小部屋の中でマクゴナガル先生は4つの寮についてや、得点のことについて話して、それから「学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」と言って一旦退室した。

 マクゴナガル先生が退室すると全員がソワソワとしながら今か今かと組分けの儀式に呼ばれるのを待った。私も周りにつられるようにまた緊張して、ハリーとロンがどうやって組分けするのか話しているのを黙って聞いていた。

「試験のようなものだと思う。すごく痛いってフレッドが言ってたけど、きっと冗談だ」

 フレッドにあとで可愛い弟に嘘を教えちゃいけないって言い聞かせておかなくちゃ。と考えていたら、私達の頭上にゴースト達が現れた。レイブンクローの幽霊と呼ばれていたのに本物を見るのは実はこれが初めてだ。「本物だ!」と感激していると、やっとマクゴナガル先生が戻ってきた。

 私達はマクゴナガル先生のあとに続き、再び玄関ホールに出た。そこから二重扉を通って大広間に入ると、そこには、不思議で素晴らしい光景が広がっていた。ダンブルドアのあの不思議な道具が並ぶ校長室も素敵だけれど、大広間もとっても素敵だと思った。

 大広間には4つの長いテーブルが真っ直ぐに並び、そのテーブルを空中に浮かんだ何千という蝋燭が照らしていた。テーブルには既に上級生たちが着席していて、キラキラ輝く金色の皿とゴブレットが置いてある。

 広間の上座にはもう1つ長テーブルがあって、先生達が座っていた。先生達の顔を1人1人見ていると、映画でも見たことのあるスネイプ先生がギョッとした顔でこちらをジッと見つめていた。その顔は見覚えがある。映画で見たわけではなくて――

「あ!」

 私の驚いた声は周りのざわめきに掻き消された。あの最後の日に出会った、リリーから少し離れた場所でこちらを睨んでいたスリザリンの男の子がスネイプ先生その人だということに今まさに気付いたのだ。通りでどこかで見たことがあると思った。ギョッとした顔をしていたけれど、まさか、あの1回きりを覚えていたとでもいうのだろうか。ダンブルドアから話を聞いている可能性もあるけれど、それなら驚くのは少し違うように思う。

 私はそんなことを考え込みながら、しばらくスネイプ先生と熱い視線を交わしていたのだけれど、やがてマクゴナガル先生が上級生と向き合う形で私達を1列に並ばせたので、スネイプ先生に背を向けた。目の前に4本足のスツールが置かれ、その上に組分け帽子が置かれた。そして、

「アボット、ハンナ!」

 いよいよ、組分けの儀式は始まったのだった。