The ghost of Ravenclaw - 015

3. マージおばさんと夜の騎士バス

――Harry――



 ハリーがこんなにたくさんの誕生日プレゼントを貰ったのは、記憶がある中では初めてのことだった。一体何が送られて来たのだろう――ハリーは期待に胸を膨らませながら、まずはエロールが持ってきた包みを開けることにした。

 はやる気持ちを抑え、茶色の包み紙を破り取ると、中から金色の包装紙に包まれたプレゼントと封筒が出てきた。生まれて初めてのバースデー・カードである。微かに震える指でハリーが封筒を開けると、中から紙片が2枚、ハラリと落ちた。手紙ともう1枚は何かの切り抜きのようだった。

 切り抜きが何の切り抜きなのかはすぐに分かった。日刊予言者新聞のものである。何せ新聞に載っているモノクロ写真に写る人々がみんな動いている。そんな切り抜きを拾い上げ、丁寧に皺を伸ばしてから読んでみると、なんとも嬉しいニュースが載っていた。ウィーズリーおじさんがガリオンくじに当たり、この夏は家族みんなでエジプトに滞在するという記事だ。

 ハリーは金貨一山当選するのに、ウィーズリー一家ほど相応しい人達はいない、と思った。ウィーズリー一家は裕福とは言えなかったけれど、みんながとても優しく親切で、ハリーが大好きな家族たったからだ。ハリーは写真に写るウィーズリー一家と同じように嬉しい気持ちになりながら、手を振っているウィーズリーおじさんやおばさん、6人の兄弟に末の妹の姿を見た。ジニーの肩に手を回しているロンの肩にはペットのネズミであるスキャバーズもバッチリ写っている。ハリーはそれを満足いくまでそれを眺めると、今度はロンの手紙を読み始めた。



 ハリー、誕生日おめでとう!
 ねえ、あの電話のことは本当にごめん。マグルが君にひどいことをしないといいんだけど。パパに聞いたんだ。そしたら、叫んじゃいけなかったんじゃないかって言われた。

 エジプトって素晴らしいよ。ビルが墓地という墓地を全部案内してくれたんだけど、古代エジプトの魔法使いがかけた呪いって信じられないぐらい凄い。ママなんか、最後の墓地にはジニーを入らせなかったくらい。墓荒らししたマグルたちがミュータントになって、頭がたくさん生えてきてるのやらなんやら、そんな骸骨がたくさんあったよ。

 パパが日刊予言者新聞のくじで700ガリオンも当たるなんて、僕、信じられなかった! 今度の休暇で大方なくなっちゃったけど、僕に新学期用の新しい杖を買ってくれるって。



 そこまで読んで、ハリーは去年の9月にロンの古い杖がポッキリ折れてしまった出来事を思い出した。2人でホグワーツまで車を飛ばせた時、校庭の木に衝突して折れたのだ。ハナが修復呪文を掛けても直らず、スペロテープで補修していたが杖は1年間壊れっぱなしだった。

 手紙にはこの他にも、新学期が始まる1週間前くらいにイギリスへ戻ることや、ダイアゴン横丁へ行って新学期の買い物をすること、それに追伸でパーシーがヘッドボーイに選ばれたことが書かれてあった。ハリーがもう一度切り抜きの写真を見ると、パーシーは既に自慢げに「HEAD BOY」と書かれたピンバッジをつけていた。

 それからハリーはプレゼントの包みの方に取り掛かった。包装紙を取ると、中には小さなガラス製の独楽こまのようなものが入っていて、携帯かくれん防止器――スニーコスコープ――というものなのだとロンのメモが入っていた。なんでも胡散臭いやつが近くにいると光って回るらしい。ハリーはそれを夜光時計のそばに置くことにした。すると、不思議と自らバランスを取ってしっかりと立つので、ハリーはそれをしばらくの間しげしげと眺めた。

 次にハリーはヘドウィグが運んできた包みを開けることにした。中身はやっぱりプレゼントで、ハーマイオニーからのバースデー・カードと手紙が添えられている。



 ハリー、お元気?
 ロンからの手紙で、貴方のおじさんへの電話のことを聞きました。貴方が無事だといいんだけど。

 私は今、フランスで休暇を過ごしています。それで、これをどうやって貴方に送ったらよいか分からなかったの――税関で開けられたら困るでしょう?――そしたら、ヘドウィグがやってきたの! きっと、貴方の誕生日に、今までと違って、何かプレゼントが届くようにしたかったんだわ。貴方へのプレゼントはふくろう通信販売で買いました。日刊予言者新聞に広告が載っていたの(私、新聞を定期購読しています。魔法界での出来事をいつも知っておくって、とてもいいことよ)。1週間前のロンとご家族の写真を見た? ロンたらいろんなことが勉強できて、私、本当に羨ましい。――古代エジプトの魔法使いたちって素晴らしかったのよ。

 フランスにも、いくつか興味深い魔法の地方史があります。私、こちらで発見したことをつけ加えるのに、魔法史のレポートを全部書き替えてしまったの。長すぎないといいんだけど。ビンズ先生がおっしゃった長さより、羊皮紙二巻き分長くなっちゃって。

 ロンが休暇の最後の週にロンドンに行くんですって。貴方は来られる? おじさんやおばさんが許してくださる? 貴方が来られるよう願っているわ。もし、ダメだったら、ホグワーツ特急で9月1日に会いましょうね!

 ハーマイオニーより 友情を込めて

 追伸 ロンから聞いたけど、パーシーがヘッドボーイですって。パーシー、きっと大喜びでしょうね。ロンはあんまり嬉しくないみたいだけど。



 ハリーはそれを読んで笑うと、手紙を置いてプレゼントの包みを手に取った。ハーマイオニーのプレゼントはずっしりと重くて、きっと難しい呪文がぎっしり詰まった大きな本に違いないとハリーは思ったが、包装紙を破ると、いい意味で裏切られることとなった――中から出てきたのは箒磨きのセットだったのだ。

「ハーマイオニー、ワーオ!」

 小声ながらも思わずハリーは声を上げた。箒磨きセットは、黒い滑らかな皮のケースに入っていて、銀の文字で「箒磨きセット」と刻印されていた。中には「フリートウッズ社製高級仕上げ箒柄磨き」の大瓶1本、銀製の「箒の尾鋏」が1丁、長距離飛行のため箒にクリップで留められるようになった小さな真鍮のコンパスが1個、それから「自分でできる箒の手入れガイドブック」が入っている。

 ハリーは途端にクィディッチが恋しくなった。クィディッチは、非常に危険だけれど、それ以上ワクワクする最高に楽しいスポーツで、1年生の時に今世紀最年少の選手として選ばれたハリーの宝物はニンバス2000という競技用の箒だった。マクゴナガル先生がハリーのために用意してくれたのだ。

 ハリーは箒磨きのケースを脇に置くと、今度はハナのペットのロキが持ってきた包みを開くことにした。落ち着いた深紅の包みに金色の紐と、グリフィンドール・カラーに彩られた包み紙を開くと、中から金色のリボンが巻かれた長方形の箱とバースデー・カード、そして、手紙が出てきた。

 ハナのバースデー・カードにはなんと、魔法が掛かっていた。ハリーが開くとカードに描かれたケーキに刺してある蝋燭に火が灯り、ピカピカと光ったかと思うと、「誕生日おめでとう!」と「大好きなハリー!」とハナの手書きのメッセージが交互に現れたのだ。ハリーはまた「ワーオ!」と声を漏らすと、交互に現れるメッセージをしばらくの間じーっと見つめていたのだった。