Phantoms of the past - 084

11. T.M.リドルの日記



 リーマスと過ごす2回目のクリスマス休暇は穏やかに過ぎて行った。最初の数日間こそ私達はルシウス・マルフォイについてあれこれ話し合っていたが、最終的は「ルシウス・マルフォイが動かない限りこちらも動かない」という結論に落ち着くことになった。下手に探りを入れて逆に勘付かれたら面倒なことになるからだ。なので、注意しつつも静観することになった。

 そう結論を出して以降、私達は去年と同様クリスマス休暇を楽しんだ。星屑製造機スターダスト・メーカーについていたメモをダンブルドア先生にあげたという話をすると「あの呪文はジェームズが考えたから喜んでいるだろう」とリーマスは嬉しそうにしていたし、閉心術の訓練を無事に終えられたという話をすると、たった4ヶ月で訓練を終えたことをとても褒めてくれた。それにリーマス特製の呪文リストもコツコツと練習していることを話すと、満足気に頷いてくれた。

 クリスマスの前にはプレゼントを買いにダイアゴン横丁へ出掛け、プレゼントをどっさり買い込んだ。去年リーマスとはお菓子の交換だけに終わって不満だった私は、「そんなに高価なものは貰えない」と渋るリーマスに新しいローブを贈ることに成功し、大満足だった。ただリーマスを説得するのに店の前で30分以上も揉めてしまったことはここだけの秘密である。(「リーマス――レディからの――プレゼントを――断るものじゃないわ」)

 もちろん、リーマス以外の人達にもプレゼントを買った。ハリーには去年と同じお菓子に加えてふくろうフーズとそれから杖ホルダーベルトを。そして、ロンとハーマイオニーにもお菓子と杖ホルダーベルトを購入した。この杖ホルダーベルトは細いベルトに杖を収納出来るホルダーが付いていて、多くの魔法使いと魔女が愛用しているものだ。ローブのポケットに入れているのが不便だったので、これは自分の分も購入した。

 それから、フレッドとジョージには悪戯グッズ、同室の子達にはお揃いのアクセサリー、ダンブルドア先生にはマグルのお菓子を去年と同様選んだ。ジニーやルーナにもプレゼントを選んで、彼女達にはお菓子を贈ることにした。悩みに悩んだのはセドリックへのクリスマスプレゼントで、ダイアゴン横丁を2周もして、更にはマグルの店もあれこれ回って最終的にネクタイピンにした。ネクタイピンには変な意味はないので贈っても大丈夫だというリーマスのお墨付きだ。

 クリスマスの朝には選んだプレゼントの数と同じくらい多くのプレゼントを貰った。ハリーやジニーからはお菓子を。ロンからはなんと本を貰ったし、ハーマイオニーからは大きな鷲の羽根ペンを貰った。フレッドとジョージは今年も悪戯グッズ――クリスマスカードには「麗しの女王陛下へ」と書かれてあった――で、ダンブルドア先生からはD.A.D.Aに関する本だった。

 そして、セドリックからはネクタイピンが届いて、これには笑ってしまった。私達は同じものを選んでいたのだ。クリスマスカードには丁寧な字で「ホグワーツに戻る日には一緒にコンパートメントを取らないかい?」と書いてあり、私はすぐに「OK」と返事を返した。

 予想外の人物からのプレゼントも届いた。なんと今年はウィーズリーおばさんが私にもセーターを編んでくれたのだ。真っ白なケーブル編みのセーターで、背中の首元に青いリボンが付いている力作だ。クリスマスカードには「またいつでも家にいらっしゃい」と書かれていて私はそれを暖炉の上の飾り棚に飾ることにした。


 *


「ハナ、新学期が始まっても大人しくしてるんだ。特にルシウス・マルフォイの息子には気をつけること。いいね?」

 遂に汽車に乗りホグワーツへと戻る日がやってきた。この日はハリーがいないことが分かっているからか、リーマスがキングズ・クロス駅まで見送りに来てくれたはいいものの、彼は最後まで私に釘を刺すことに余念がなかった。

「リーマス、出来るだけ心配掛けないようにするわ」
「ああ、絶対だ。秘密の部屋に乗り込んだなんてダンブルドアから手紙が来ないようにしてくれると嬉しい」
「1人では行かないけれど、もしもハリーが乗り込んだなんて知ったらついていくわ。これは譲れない――でも、少なくとも、乗り込んだけれど無事に生還したという手紙になるよう善処するわ」
「君は私を心配させる天才だな」
「大丈夫よ、リーマス。私、有言実行する主義なの」

 なんだか納得していない様子のリーマスと最後にハグをしてから私はホグワーツ特急に乗り込んだ。コンパートメントは予めセドリックが確保してくれていて、私はセドリックと2人でクリスマス休暇に起こった出来事をあれこれ話しながらホグワーツに到着するまでの時間を過ごしたのだった。